はっぴーばれんたいん



(・オズロックかバダップか白竜のどれかでバレンタイン)


白竜にあげるチョコレートならば、究極で無ければならないだろう。そう思うと名前はお手上げだなと思いながら白竜に思いを馳せて、チョコレートの入ったボウルを撹拌した。一応、手作りチョコを上げたいな、なんて思っていたがさっきから出来る物は一般的と言うか、いかにもそこらへんにありそうな、何の変哲もない手作りチョコレートしかできなかった。いっそのこと某有名チョコ菓子店から買ってしまったほうが究極で美味しいかもしれないと名前は思い始めていた。あそこの店のものならば、可もなく不可もなくだろう。というか、間違いなく可である。少なくともこの大量に出来た究極ではないチョコレートの残骸よりは。と、お財布の中身を確認して名前は某有名チョコ菓子店へと足を運んだ。



チリリン、ベルが鳴って客を迎えるように張り付けた笑顔を付けた店員たちがいらっしゃいませ、と一斉に声をかけてきた。お店は中々に繁盛しているらしい。矢張りバレンタインという特別な日だからだろう。店内は女の子たちで溢れ返っていた。その中に紛れ込み、値が張る美味しそうなチョコレートの箱を一つ選んで取って会計に並ぶ。行列が出来ていて、頭がくらくらしたけれど直ぐに順番は回ってきた。今月まだ、手を付けていない財布は潤っていたが、これを購入することで、少し寂しくなってしまったようだ。小銭を財布の中に入れてしまう。白竜には何と言おうか、言い訳は沢山沸いて出てくるのだけれどやっぱり、本音をぶつけようと思った。



「何だ、これ」白竜に翌日、買ってきたチョコレートを突きつけると矢張りそのような反応が返ってきた。いかにも不満げに眉をひそめて、チョコレートをまじまじと見つめる。「これは、某有名チョコレート菓子店のもので間違いないが」「味は保証できるし、高かったんだからね」と言うとまあ、確かに不味くはないだろうな、と返した。「お前はチョコレートも作れない程に不器用なのか?」まさか、と白竜の視線を浴びる名前は「そんなわけないじゃない。溶かしたり、刻んだりするだけなのに」と早々に淡々と答えた。「だよな。って、なら、ちゃんと持って来い!まさか、これは義理チョコなのか?俺と別れたいのか?」



究極にネガティブな方向へと思考がぶっ飛んだらしい白竜は肩を落として、すっかり意気消沈していた。名前が慌ててフォローにまわる。「違うの!究極のチョコレートが作れなかったから、持ってこなかったの……、」一番うまく行ったのは残しておいているから、白竜さえ良ければ、帰りにうちに寄って食べて行って。と言うと白竜の目が輝いた。ああ、なんだ、チョコレートは作ってあったんだ、と。



終始無言だった。白竜は、家についてから名前のチョコレートを待っているようだったので、名前は仕方なく、重たい腰を持ち上げて「言っておくけど、究極とか求めないでね」「ああ、わかっている」名前はそれを聞いて安心したのか奥の冷蔵庫のある台所まで行って、冷蔵庫からラッピングすらされていない、それを取り出した。ひんやりと冷たい空気に、少しだけ顔を顰めて電気代の事を考え直ぐに閉めた。パタン、と音を立てて冷蔵庫がまた、役目を順守しはじめた。白竜の元に帰る頃には名前はすっかり自信を無くしていて、やっぱり捨てたと嘯こうかと思っていたくらいだった。



「はい、白竜……」「!遅かったな」遅かったことを指摘したが、直ぐに目の前に出されたチョコレートに目を奪われたらしかった。「なんだ、本当に作っていたのか」チョコを一粒つまんでパクリと口の中に入れる。それからペロリと先ほど摘まんでいた指先を舐めて「うまいじゃないか、口の中で直ぐに溶けてしまった」と言った。「でも、」「うまいからお前も食えばいい」そう言って、また一つ摘まんで口の中に放り投げる、そして私はいいよと遠慮している名前の肩を掴んで口付けた。殆どとろけて無くなってしまっているチョコレートを口移しで渡す。「んっ、む……」



「訂正しておく。こうすると究極にうまく感じる」「え、もう恥ずかしいから普通に食べてよ」と言う名前の抗議は白竜の力と本気で抵抗しなかったのもあって、チョコレートを二人で貪るように食べあった。微睡むように、とろんとしてきた名前の肩を抱いて耳元で囁くので、名前は腰に何かが来たような気がした。「究極にうまいぞ、名前」

あとがき

まさか季節ものが来るとは思っていなかったので、驚きました。前回は、オズロックにしたので、今回は白竜にしてみました。

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