ポッキー・ホリック




(・剣城君に浮気疑惑が浮上して騒ぎになる)


辺りは騒然としていた。あの剣城と言う男に、浮気疑惑が浮上しているからだ。剣城と言う男はそういう男じゃない。名字名前という一人のクールな女の子に恋をして、めげずに何度もアタックしてようやく恋人と言う権利を手に入れたぐらいに、彼女に盲目だったからだ。なのに、……浮気疑惑?松風や一部の人間はとても疑問視していた。果たしてあの剣城がそんなことをするだろうか?と。それともサプライズか何かでも彼女にしたいのだろうか?と考えた所で疑惑は疑惑のまま屹立している。



名字に剣城の事を尋ねたが、「僕は、剣城のことを信じているから」と言って、それきりコメントを貰う事は出来なかった。やられているかもしれない、当の本人がこれでは、周りが騒ぎだすしかない。マネージャーたちは酷いだの最低だの剣城を珍しく罵っているし、神童と瞬木たちも「これが本当だったら、俺たちが貰っていいのか?」「いいんじゃない?名前を悲しませた罰で」とか邪なことを考えていた。松風は違和感を覚えていた。何故疑惑を立てられてまでその女の子と一緒に居るのか、だった。そりゃ、松風だって隙あらば名前が欲しいと思っているが、違和感をぬぐえない。



「剣城君、本当最近まるで名前さんを避けているみたいだよね」「本当……やましいこと、あるのかな」「最低な男じゃねぇか!あたしが喝入れてやろうか?!」マネージャーたちが今日も剣城の事を話しあっている。名字は辟易としながらも、関係ないと敢えて知らないふりと気にしていないふりを貫いていた。だけど、本当は不安だったし、自分は可愛げのない、性格だと自覚していたから飽きられても不思議じゃないと思っていた。マシュマロみたいな、ふわふわで甘い香りのする女の子のような女の子には成れないのだ。



溜息をつく、いい加減何が不満なのか教えてほしいと思っていた所で剣城が帰還した。「……ただいま」一瞬皆の、視線が剣城に集まったが直ぐに見てはいけないものでも見てしまったかのような顔をして談笑に励んだ。剣城は、そんな様子を知っていながら敢えて、皆と同じように見ないふりを決め込んだ。そして、少しだけ愛おしげな声で「名前」と名字を呼び寄せた。それから、自室に呼びこんだ。名字は珍しい事もあるもんだ、と思いながら久々に剣城の匂いのする部屋に入り込んだ。



「すまなかったな、最近かまってやれなくて」「別に」また、可愛くない発言をしてしまったなと名字は思ったが時計の針は逆さに回ってはくれない。剣城は苦笑しながら、鞄から小さな箱を取り出した。「何?これ」「ペアリングだ」剣城の答えが意外すぎて名字は固まってしまった。てっきり可愛げのない自分に逢いそうでも尽きたのかと思っていたのであまりの衝撃に後ろに倒れ込んでしまいそうになった。しかし、体制を持ち直していつも通りの平然とした装いを見せた。



「何で急に」「こうしたほうが、恋人っぽいかなと思って、な」「浮気疑惑は知っていたのか?」肝心の質問には剣城も少しだけ、身じろいだがはぁと溜息をついて知っていたと言った。何故こんな疑惑が立ったのか謎だけれどと本人は言う。「多分、店の店員が女だから、そいつに逢いに行っているとでも思われたんだろう?」成る程、そうだとしたら筋が通っている。剣城は、作り笑いなどは苦手だがきっと取り繕って笑みを浮かべたりしたのだろう。それに対して店員さんが顔を赤らめた等と言っても名字は不思議に思わなかった。剣城は、鋭い目つきをしているけれどこれでも、女子には相当もてるのだから。



「ペアって憧れていたんだが、流石にペアルックとかは恥ずかしいだろう」「僕の指のサイズよく分かったね」「手を繋いだ時に何度も確かめていたからな」そう言って、名字の指にペアのリングを付けた。剣城も付ける。お揃いの銀色の指輪がキラキラと外の光に反射して目を焼いた。「……有難う、剣城」「あと、剣城じゃなくて出来ればそろそろ名前で呼んでほしい……っていうのは贅沢、か?」



名字は随分と安い事でこの男は満足するのだなと、少々呆れながらも、口元に笑みを描いた。耳元で囁いてやると剣城が真っ赤に成ってそのまま、床に倒れてしまった。まだまだ、これから先の事をするには難儀であり時間がかかりそうだ。と名字は思った。

あとがき
いつものあの子で良かったのでしょうか、あまり騒動に成っていない気がしたのですがお気に召してくれれば幸いです。


title 箱庭


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