マシュマロびより




(・名字が同じ滝兄弟の呼び方に困る敬語夢主)


滝君、と呼ぶと「はい」と「何だよ」って二つの声が大抵聞こえてくる。名前は最近、マネージャーに成った為、知らなかったのだが、このサッカー部に所属している滝という人物は二人いて(厳密にいうと兄弟であり)困惑を隠せないでいた。なんて呼べばいいのだろう、滝弟、滝兄と呼ぶのではあまりにも失礼すぎる。だからと言って、名前で呼ぶのは馴れ馴れしすぎやしないかと名前は溜息をついた。「滝君、ドリンクです、お疲れ様です」そういって、二本分用意したドリンクを二人に渡した。「それにしても、滝君じゃ、なんだかわかりづれぇな。チビと一緒の名字だし」「煩いなぁ!そんなのこっちだって一緒の気持ちだよ!」



やはり二人はご立腹の様であった。しかし、打開策が無い。滝君のどちらか一人に、用事がある場合はとても面倒だし、とこの際と「名前で呼んでもいいですかね……?あ、勿論嫌だったら、その……呼びませんので」と二人に提案した。滝兄こと総介と、滝弟こと快彦に提案して見た。直ぐには慣れないかもしれないし、他の選手と区別しているみたいで嫌だったけれどこれ以外に、二人をわける方法はないと考えた為だった。「まあ、チビとごっちゃになるよりはマシか」「それはこっちの台詞だい!」と言った、快彦の頭を総介がその特徴的な髪型が崩れるくらいにぐしゃぐしゃと撫で付けた。どうやら兄弟仲は良好のようだ。



「たきく……じゃなくて、快彦君は外周追加だって言っていました」「はーい!」と元気な声がグラウンドを木霊した。未だに滝君と呼ぶ癖は直っていないのだが、それでも言い直すから前よりも二人が困惑することは無くなりつつあった。名前もそれには、安堵を覚えていた。「たk……総介君は筋トレだそうです」二人に用件を告げると二人とも、別々の行動をとり始める。まだ慣れないのかと苦笑と微笑ましさに包まれながら。



ある日、滝兄こと、総介から呼び出しを食らった名前は訝しんでいた。何故に放課後の練習終わりに、一人で人気のない体育館裏に呼び出されたのかはなはだ疑問であったからである。それでも、まさか、行かないわけにはいかないので、行ってみれば夕日色に染まった頬と夕暮れをバックに総介が遅かったなと声をかけてきた。それに応じるようにすみません、と答えれば「ま、いいんだけどよ」と、照れた様に頬を人差し指で掻いた。その仕草が可愛くてなんだか、微笑ましくなったけれどどうやら、事態はそう言う問題ではないらしくて。



総介君の顔がずいっと近づいてきた。十センチもあるかないか、の至近距離である。これならば、どんなに目が悪い人でもきっと総介君の顔が見られるだろう、私は目が悪くないのでくっきりはっきりと見えた。「滝って呼ばれるのすげぇ嫌だった。あのチビと同列に扱われるのが嫌だった」チビ、ようするに……弟の快彦君の事だ。そんなに、嫌だったのかと涙ぐみながらなんて謝り倒せば許してくれるだろうか、と考えあぐねていた所、総介君が言った。「泣くな。俺が言いたいのはそうじゃねぇ。俺は名前が好きなんだ、だから、あいつと同じなのが随分前から腹立っていた。でも、名前で呼ばれるのは」



結構好きだぜ、なんて。総介君の声が耳元で聞こえた。その時だった、あー!とか言う、幼い声が聞こえて、私と総介君の間に割って入ってきた。小さいけれど活発に動く愛らしい生き物、それは快彦君だった。「兄さんずるい!俺だって、名前さんの事好きだし!抜け駆けすると思って探していたら案の定だ!」「うるせ、ちびすけ。お前にはまだはえーんだよ」早いも何も快彦君だって、立派に中学一年生だから、そういうこと考えていても可笑しくないと思うのですがと、口を挟みたくなったが、止めた。きっと徒労に終わるだろう。



それから、新たな関係が始まった。私と総介君と、快彦君のサンドイッチ。真ん中には必ず私が居て、度々二人は喧嘩をしている。なんでも兄弟だから、似た人を好きに成ってしまったとかなんとか。私には関係ない……と言いたいけれど、当事者なので言えなかった。似た者兄弟、滝君。そんな二人がちょっぴり、羨ましくもあり、可愛いなと思っているのは内緒ですよ。


あとがき

ちょっと難しかったのでフラグを入れてみました。兄弟でサンドイッチ中々いいと思います。滝兄弟は仲良いと思います。


title 箱庭


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