夕陽によく似た君は、鳥籠で歌う




(・喜多の連載で、無自覚ブラコン、シスコンしていた頃の喜多姉弟の日常)
一番はちょっといきすぎのシスコンです。


今日は姉さんと買い物だ。といっても、俺のシューズがぼろくなってきていたから新しいのを買うのと、ボールを新調するだけなのだが。姉さんも勉強漬けだからいい気分転換に成るだろう、姉さんの好きそうなところも周るつもりだし。「姉さん、支度で来たよ」俺がひょっこり、姉さんのドアから顔を覗かせると顔を綻ばせて破顔させた。それから、私も丁度今終わったところなの、と今日は随分とめかしこんだ姉さんが目に入った。悪い虫がつかなきゃいいんだけど。姉さんは俺と違ってきつい印象を与えるような雰囲気ではなく、寧ろふんわりとした優しい雰囲気を纏っている。そう、まるで綿菓子のように。「一番、ボールとシューズだっけ?」「ああ、うん。そうだよ、他にも周るけど」そう付け加えると姉さんの目が輝いた。やっぱり息抜きは大切だ。



まずはシューズからだ。俺の足のサイズにあっていて、動きやすい物がいいと俺は色々履き替えながらどれがいいか思案する。姉さんも一緒に成って考えてくれる。「一番、これ、履きやすそうにしていたよ」姉さんが俺もまぁまぁ履き心地がいいなと思っていたシューズを指差した。「ああ、それか」姉さんも言うんだし、これにしよう。店員さんにシューズを渡してお金を出す。次は自宅で練習用のボールだ。靴屋から出て、徒歩五分、店についた。直ぐに目的のボールを見つけ出す。蹴り心地もよさそうなので、これに決定したところで会計に行くと姉さんが「此処は私が払うよ」と言ってくれた。申し訳なさで一杯だったが姉さんと違って俺はバイトが出来る年でもない。今日の買い物もギリギリのお小遣いの中でやりくりしている。お言葉に甘えて姉さんに買ってもらう。こういう姉さんの優しい所が好きだから未だに姉離れ出来ないんだよなぁ、とぼんやり考える。



次は姉さんの気晴らし。ゆっくりと手を絡めて、歩く。いつもの日常だから姉さんもあまり驚かない。傍から見れば行き過ぎた、ブラコンとシスコンって言われているようだけど、そんなのは関係ない。俺たちは俺たちの適切な距離で歩いているのだから。姉さんの小さな歩幅にあわせて俺も歩む。さっき買ってもらったボールは大事に使わないと。姉さんから買ってもらったものはぼろくなっても捨てたくない。姉さんの気持ちまで捨ててしまうようで……。姉さんが雑貨屋さんに入って行くので、俺もつられて入って行く。様々な小物が揃っている中、姉さんが「あっ」と声を出した。どうしたのだろう?と覗き込んでみた視界の先にはサッカーボールを模したストラップがあった。



「一番、お揃いにしよっか」私サッカー部じゃないけどって苦笑しながら二つストラップを手に取る。姉さんとお揃い……うん、すっごく嬉しい。俺は顔をだらしなく緩めて「ああ!」とだけ答えた。姉さんとお揃いのものなんて初めてじゃないけど、こう身近にいつもあると思うとそれだけでサッカーの練習も捗りそうだ。姉さんじゃないけど、代わりにこのストラップが見ていてくれる。姉さんはそれからも自分の好きそうなものを買ってほくほく顔で、戻ってきた。何を買ったかは大体察しが付く。何年姉さんの弟をやっていると思っているんだ。生まれてからずっと姉さんと一緒なんだ。



帰宅時も手を繋いで帰ってきた。周りの視線がそろそろ痛いなぁ、と思うのとたまに微笑ましい(こっちは若しかしたらカップルに見られているのかも)視線が突き刺さる。姉さんはあまり気にしていない風だったけれど。ソファーで久々に外出して疲れた姉さんが深く腰掛けていた。「ねーさん」俺が横から抱き着けば、甘えん坊だなぁ。とくしゃくしゃ髪の毛を撫でてくれた。優しい、温かい手のひらだった。「絶対あのストラップつけてね」「勿論!俺、姉さんから貰った物はいつも大切にしているんだ」小さい頃に買ってもらったぬいぐるみも、恥ずかしいけれど未だにベッドにあるし、シャーペンや小物に至るまで。姉さんは吃驚したように目を見開いて「ボロボロに成ったり壊れたら捨てていいんだよ?」っていった。「いや、姉さんの気持ちまで捨ててしまいそうで嫌なんだ、俺が」ふぅん……と納得したようだった。



「そういえば、最近お父さんとお母さんがそろそろ弟離れすればいいのにっていうのよね」姉さんが寂しそうに顔に影を落としてそう言った。何でそんなことを言うんだろう?「姉弟仲がいい事はいいことだと思うんだけどな。それ、俺も言われたよ」でもお互い依存しているかのようにくっついた磁石のように離れられないでいる。俺たちの事をブラコンシスコン言う奴は放っておけばいい、これが俺たちの在り方なのだから。「うん、そうだよね、姉弟が仲悪いより、良い方がいいに決まっているよね」姉さんが元気を取り戻したようにそう言ったので俺は「ああ。そうだよ」と肯定しておいた。これで、姉さんの憂鬱も晴れたようだった。俺はまたきつく姉さんを抱きしめたまま、このまま離れないで居られればいのにと心の片隅で思った。


あとがき
無自覚にブラコンシスコンといっても一番はちょっと行き過ぎた面がありそうな気がしてこうなりました。お姉さんは行き過ぎたシスコンには気が付いていないイメージです。


Title リコリスの花束を


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