愛に生きた少女




(・クレッシンドラブストーリーと同じ夢主でミストレを女性と勘違いした夢主が別れ話をして修羅場最後は誤解が解けてラブラブ)


怨嗟したところで仕方ない、そう思いながらも気持ちがガラガラと積み木を崩すように崩れていくのがわかる。バダップの隣に居た女性、綺麗な顔立ちをしていた。たまたま、偶然街を歩いて買い物をしていた時にバダップの姿を見つけたから走り寄って、声をかけようと思った矢先であった。隣にいた女性がころころと愛らしい表情で笑うものだから。これは浮気に違いないと名前は思い、視線と雰囲気に気が付いたらしい優しい瞳をしたバダップに近づいて平手打ちをしてしまった。本来ならばこんなことをするような人物ではないし、軍人に手を上げるだなんて前代未聞である。隣に居る、女性も吃驚としていて唖然として声も出ないようだった。



「なっ、名前、何を……」頬に赤い文様を付けて、バダップが驚いた様に目をまん丸くさせていた。普段のバダップの冷静さは何処にもなかった。ただ、あるのは絶望の狭間に居るような気分だけだった。「バダップの馬鹿!!」「それだけでは何もわからん」バダップは困り果てた様に隣の女性に目をやって助けを請うような表情をしていた。それにまた名前がイラつくのにも気が付かずに。「バダップの浮気者!そんな可愛い子連れて、私に見せびらかしたかったの?!それとも、私の事なんて遊びだったの?!酷いよ」今まで気丈に振る舞っていた名前の目からぽろぽろと透明な雫が零れ落ちて行って地面で形を失った。



バダップは浮気者、そんな可愛い子を連れての時点で事を把握した。成る程、隣に歩くミストレを女と勘違いしたのか、と。だけど、何て声を掛ければいいのか困っていた。「ああ……大変言い難いんだが、こいつは男だ」「はぁ?そんな嘘……」ミストレはニィと笑って名前に話しかけた。「中々強気な女だなぁ、バダップに平手打ちだなんて前代未聞だ」その声は男の子の声そのもので、名前も石化してしまった。ようやく石化が解けたころにはあわあわと誤解でバダップを引っ叩いてしまった。とか、往来で人目を集めてしまった打とかそういうことばかりであった。



まずは謝るのが先決だと思い、重たくなってしまった口を開いた。「あの……バダップ、本当にごめんなさい」頭をしっかりと下げて、誠心誠意謝ったがバダップは何も答えなかった。それが怖くて数分後に頭を上げれば、涼しい顔をしたバダップが目に入った。「許す気はない」そんな冷たい言葉の雨が降り注いだ。許す気はないってことは……と絶望と悲嘆に暮れていたら、ミストレがポンと名前の肩を叩いて励ました。「本当に怒っているわけじゃないから、安心していいよ。それに、バダップは君には甘いらしいじゃないか」それじゃあ、自分はお邪魔みたいだから此処で、と別れたミストレの背を眺めつつ本当にそうだといいな、と名前は考えた。



バダップは相変わらずいかめしい顔つきで名前の手を無理やり繋いだ。名前の歩幅に普段は合わせてくれるのだが今日に限ってはそうではなかった。ぐんぐん歩いていく先にはバダップの家があった。別れ話かな、とか思うと涙で視界がドンドンぼやけていった。重々しい扉を開けてバダップは直ぐに自室へと向かう。そして、ようやく口を開いてくれた。「今日の事、俺は怒っている。あいつは男だ」「そう、みたいだったね……でも遠目でも美人だったから女の子だと思って」はぁと重々しい溜息をバダップはついて言葉を選びながら紡いだ。「今日の、名前の行動次第では許してやる」「本当?!どうすればいいの?」「……お手本を見せよう」そう言って、バダップは名前を自分の体にすっぽりと埋めさせた。急にかぁと熱が頬や耳に集中するのがわかる。



「例えば、だ」そう言って彼の体が離れた。成る程、あまり慣れないけれど自分からああいう風にすればバダップは許してくれるのか、と名前は躊躇いがちにバダップの頬に唇を落とした。「甘いな」グイと引っ張られてバダップから舌を絡ませる濃厚なキスが与えられた。「っぷあ、バダップは何もしないんじゃなかったの?」「俺はそんなこと一言も言っていない。名前が愛おしいからな、つい意地悪をしてしまう」加虐心を煽られると言うべきか……とバダップが少しだけ思案して、また、唇をくっ付けた。息が苦しくなった、名前がドンドンとバダップの胸を叩いたところで解放してやる。「そもそも。俺はお前のものだ名前、そして、また逆も然り……だ」「バダップが私のもの……」「そう。そして、名前は俺のものだ、わかったか?」わかったか、わかっていないかのような蕩けた顔をした名前はうん、とだけ答えて、バダップに身を任せた。すっかりのぼせ上ってしまったようだ。


あとがき

前回は名前呼びが無くて残念と言われたので今回は名前をしっかりと入れたつもりです。最後がラブラブかはわかりませんが、お気に召していただければ幸いです。

Title 箱庭


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