あと百回嘲りあえたら素敵ね




(・観月路子で、デート)
夢主はマネージャーで年が離れています。

実は路子監督と付き合っていたりする。勿論、私がまだ子供なので健全なお付き合いだ。それでも、手を繋いだりするだけで幸せを分かち合っているような気がして幸せな気持ちに成れるのだから不思議である。私たちの出会いのきっかけはサッカー部だった。私はマネージャーを務めていて、路子監督と出会った。それから自然に星の引力に引かれるように、私は路子監督に心を奪われていた。穏やかな笑みを絶やさないけれど、厳しい所もあって。告白は私からしたっけ。路子監督は驚いた様に初めて見た顔をしていたが頬をほんのりとピンク色に染めて「わかったわ」とだけ答えた。それが了承の意であったと気が付いたとき私は天に上るような気分だった。



「あら、考え事かしら?」握りしめられていた手に力が込められた。ああ、意識が現実に戻されていく。今日は路子監督とのデートなのになんて失態をおかしてしまったのだろう。ごめんなさいと謝ると「いいのよ」と大人の余裕なのか、笑みを湛えてお店の中に入って行った。ちょっと高そうなお店だなと思ったけど、路子監督と手を繋いでこうしているだけでドキドキしてしまって、それどころではなかった。路子監督は先ほどから何かを吟味しているようだった。それは指輪だったりアクセサリーだったり、さまざまである。やはり、路子監督も女性なのだなと思ってしまう。絡めている指先も細くて女性特有の柔らかさとしなやかさを持ち合わせている。



「路子監督、何か買うんですか?」「しっ、此処では監督は厳禁よ。外では路子でいいと言ったじゃないの」少し怒らせてしまったようだ。確かに混同してしまっていた。外では路子さんと呼ばなければいけないのに、また失態を犯してしまった。何度今日は失態を演じるのだろうか。全く、自分の不甲斐無さにはあきれてものも言えない。「そうでしたね、路子さん」「ふふっ、合格よ。貴女は可愛い子ね」可愛い、って言葉にくらりと眩暈がした気がした。私からしたら路子さんは美しい女性ですって言えばお世辞がうまいのねって言われたがお世辞じゃないのにと少しむくれてしまった。口を尖らせていたら、路子さんが漸く買うものを決めたようで「これ、どうかしら?」と指輪を見せて尋ねてきたので私は素直に「路子さんに似合うと思いますよ」「そうじゃなくて、貴女も気に入ってくれるかしら?」



私はその言葉の意味を反芻してみせる。……まさか、ペアで買おうというわけなのか?もう一度指輪を見つめる。シンプルだけど、高価な物だとわかる。そんなものを買わせていいものだろうか?「あの……確かに素敵だと思いますけどお値段が」「ふふっ、じゃあ、決まりね」決まりと言って、会計にまで持って行ってしまった。私は置いてけぼりである。帰ってきた路子さんは満足げに私に袋を渡してくれた。「よく指のサイズわかりましたね」「手を繋いでいたらわかるわ」流石、路子さんである。「あの、これ……でも」「毎日それを付けて頂戴ね」まぁ、天河原は校則などあってないようなものだからいいのだが……。それでも、こんな高価な物を身に着けるという風習が私にはないので少し困惑してしまう。



「それはね、虫よけよ」「虫よけ?」私が困惑気味にどういう意味だろう?と首を傾げていたら路子さんが、答えを出してくれた。「何を言っているの、サッカー部の皆の視線気が付かないの?皆貴女を狙っているわ。名前、可愛いもの。だから虫よけ」成る程、って、皆こんなちんちくりんに興味等ないと思うのだが路子さんはちょっとだけ、心配性だなぁ、と思いながらも心臓の当たりがじんわり温かくなるのを感じた。「でも、路子さんとペアなの見つかったら大変なのでは?」路子さんは微笑を浮かべて「あら?そう?私は困らないわよ、寧ろ名前は私のものだって見せつけられていい気味だと思うわ。名前もあまり、皆を勘違いさせるような行動は慎みなさいね」そんな行動取ったつもりはないんだけどなぁ。ただ、単にマネージャー業に精を出しているだけで。



帰り道も手を繋いで歩く。送っていくわと言う路子さんの言葉に甘えて。だって、少しでも長く路子さんとのデートを楽しみたかったから(帰るまでがデートなんです!)。でも路子さんは大丈夫なんだろうか、帰り道女性一人で帰らせるのは私の良心がとても痛む。でも路子さん曰く大丈夫よ、暴漢対策はきっちりとっているからとのことなので、きっと大丈夫なのだろう。過剰防衛に成らなければいいのだがと寧ろ心配してしまった。早くつかないでと、願いは虚しく家の前まで到着してしまった。路子さんは相変わらず穏やかな笑みを湛えている。それから人目を気にするようにこそこそとして私の顎を持ち上げた。リップ音が聞こえて柔らかな唇が私の唇と重なっていた。「ふふっ、内緒よ」「も、勿論です!」きっと、明日からは指に今日買ってもらった指輪が光るのだろう。愛しき人から貰った指輪が。


あとがき
夢主の年齢をさげてしまってすみません。路子さん初めて書きました。というか、監督系はほぼ初めてな気がします。デートとの事なので少し悩みましたが楽しんで書きました。

Title カカリア


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