偏屈マリオネットの求愛




(・白竜でゴッドエデンの実力者、実は脱がしたら女)


ゴッドエデンで俺より強い奴なんか居ない。……といいたいところなのだが、俺の究極を超えてしまうような奴が一人だけ実は居る。だから、俺は兎に角そいつのやることなすことが気に食わないし、大嫌いだった。今日もフォワード同士なので、試合中にわざとぶつかりに行けば軽くボールをカットされて、挙句の果てにシュートを鮮やかに決めてしまったのだから、情けなさ倍増である。ニィと、口角を持ち上げて「白竜の究極はこんなものか」なんて挑発して来る。「今日は調子が悪かっただけだ!」そうだ、こいつがゴッドエデンに来てからと言うもの、俺の調子は狂わされっぱなしだ。



名前は他の男と比べて、線が細くて華奢だし、何故か知らないが俺たちと着替える時間をずらしていたり、風呂の時間もずらしている。声変わりもしていないのか、低くはない。きっと、ゴッドエデンに来たから、ぼこぼこにされて、体中痣だらけなのだろう。とはいえ、男同士なのに、そこまで徹底する必要はあるのか疑問である。タオルで顔を拭っている名前の顔立ちも青銅や木屋みたいに女みたいだ。それに、名前が女であるはずがない、俺からボールをやすやすと取り上げて、強烈なシュートを打ち込む姿はさながら、鬼の様である。大体、何で俺はそんな妄想に掻き立てられているんだ?……何も考える必要はない、だが……、「うぅむ」俺は唸って考え込む。俺は悔しくなって今日の練習を倍にして、特訓に打ち込んだ。兎に角あいつに勝ちたい一心だった。



今日は沢山、汗もかいたし明日に備えて休まなければ……気が付けば外はもう夜の緞帳を張っていて、島だからこそ良く見える星々が瞬いていた。だが、こんな景色も今日の昼の事を思い出すと忌々しく感じる。ガラリ、乱雑にドアを開けて着替えるためにロッカーの並んだ部屋に入る。「誰っ?!」「……ん?その声は、名前か」名前も今着替えていたのかと驚いた。それにしたって、此処まで時間をずらすなんてよっぽど何か後ろめたい事でもあるのか?と思い、近づくと名前は慌てて、服を着て何でもないようなそぶりを見せた。でも、一瞬見えてしまったんだ、細いくびれた腰が。「その、着替えるまで外に出ているから、」「何でだよ、男同士だろ。何を恥ずかしがっているんだ?まさかそっちのけでもあるのか?」それなら勘弁願いたいが、若しかしてこいつは……と言う、俺の予想がグルグル頭の中を暴れている。



「違う!そんな気はない!ノーマルだ、至って女子が好きだね」ふぅーんと言って俺はその華奢な腕を掴んで、頭上で纏め上げてやった。名前はやめろ!とか叫んで抵抗していたが、何故か抵抗する力が弱い。こいつはこんなに力が無かったのかと驚かされるほどであった。そして、俺は意を決して名前の服をまくり上げる。「?!白竜お前、そっちのけがあるのか!やめろ!」更に抵抗するように暴れたが俺の力で抑え込めるほどだった。あっけなかった。そして、先程見た、腰の細いくびれと、女特有のそれを殺すためであろう、さらしを巻きつけている胸を見た瞬間に疑念が確信に変わったのだった。「お前、女だったのか……」それならば、確かに全ての謎は解明される。声変わりしないのは女だから、風呂に一緒に入れないのも女だから、着替えの時間をわざわざ遅めていたのも女だから。全ては性別の呪縛。「見たな……!よくも、よくも。白竜!許さないぞ!」真っ赤な顔をして、暗がりの中凄く悔しそうな顔をして、俺を睥睨していた。それすらも可愛く見えたんだから、末期である。そもそも、ゴッドエデンには、職員しか女が居ないからかもしれないが。「へぇ、お前そんな顔も出来るのか」「白竜、頼む……このことはどうか内密にしてくれないか……」女だとばれたら島から追い出されてしまうかもしれないと必死に懇願してきた。形勢逆転と言った所か。



「そうだなぁ、……名前、黙っておいてやるよ。俺は究極に優しいからな」「!あ、有難う白竜。お前は良い奴だな……っ」名前はてっきりチクられると思っていたのだろう。涙ぐんで潤んだ瞳を俺に向けた。それが俺を煽っているように思えた。心臓の動悸が早く成る気がした。「で、だ。私の秘密を知ったのは迂闊だったが……そろそろ、解放してくれないか……?」「あ、ああ……」俺も我ながら大胆な行動に出たなぁ、と(女の服を脱がすなんて、人生で初なんじゃないか)思いながら、名前に言い忘れていたことがあったのを思い出した。「ああ、そうそう。俺はただで黙っておく気はないぞ」「なんだと……、」顔を顰めてそれもそうか、と納得する名前に俺は言ってやった。「名前、キスをしてくれ」「欲求不満か白竜。男しかいないからといって、好きでもない男と唇などくっ付けたくないのだが」「よ、欲求ふま……っ!違う!お前に興味が沸いたんだ!」それで黙っておいてやるなんて、俺も随分と落ちぶれたものだ。


あとがき
白竜さんなら脱がしかねないかもしれませんね、あと、自分より強い人が居たら絶対に忌々しいとか思っていそうな気がします。素敵なシチュエーションとお優しい言葉有難うございました。


Title Mr.RUSSO


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