クレッシェンドラブストーリー




(・バダップで甘い)


バダップは軍人さんだから、中々逢えないのは仕方ないのです。だから、月一程度のデートは本当に楽しみで、毎回お洒落にこだわってみたり、女の子らしさを強調したピンク色の可愛らしい物を着てみたりするとバダップが今日も可愛らしいなって恥ずかしそうに、照れながら言ってくれる。そういうところ含めて全部全部大好き。ぎこちない笑みも(最初は引き攣っただけの顔だったけれど最近は、微笑んでくれるように成ってくれた)、慣れていないと思われるエスコートも。それにしても、今日は遅いな、遅れてくるなんて珍しい、と思いながら広場の時計に目をやる。もう、二十分は待っている。暇つぶしすることもせずにそのまま、待っていたら、五分経った頃位に息も切らさずにさっそうと現れた。



「遅れてすまない、演習が予想以上に長引いた」「ううん、仕方ないよ」気にしていないよと言う風に装ってほっと息を零した。どうやら、彼は遊んでいたりとか忘れていたわけではなく予行演習が長引いていただけらしかった。軍人だから仕方ないで済ませてしまうけれど、本当は少しだけ寂しかったりする。逢えない時間が長いのに更に時間を削られてしまうなんて。ちょっと、焼きもちを焼いてしまいたくなったけれど、私の醜い部分を見られたくなくて私は精一杯、笑んで見せた。バダップは異変を感じ取ったのだろう、すまないと再三に謝ってきたので顔を上げさせた。彼の家柄等を考えて頭を下げさせるなんてとんでもない行為だ。



「いいの!もう気にしていないから!」「しかし、」言葉を詰まらせて、彼は息を吐いた。それから言葉を乗せて風に。「埋め合わせをさせてくれないか」行き成り手を繋いできて彼はそのまますたすたと歩きだす。勿論、私の歩幅に合わせてだが、何処かまだ手慣れていない感じがして微笑ましかった。バダップは立派な自宅に私を通すと楽にしてくれと言って、居なくなってしまった。生活感のあまりない、部屋だなぁと思ったけれどそういえば、普段は寮と言うかそこに住んでいるので当然と言えば当然なのかと思い直した。バダップが帰ってきたのは、それから少ししてだった。「何もなかった、取りあえず飲み物だけでも」そう言ってバダップが紅茶を勧めてきた。私は促されるように椅子に座り紅茶を啜った。甘い、私好みに調整してくれたのだろう。バダップはぎこちなく笑んで「どうだ?」と尋ねてきたので「美味しい」と答えておいた。



しかし、なんで自宅に招いたのだろう?他に買い物とか色々しなくてよかったのかな?と疑問に思っていたら不意にバダップが不敵な笑みを浮かべて、紅茶のカップを置いた。そして、私の後ろに回り込んで、私の髪の毛を一房掴んでスンスンと鼻を鳴らした。「いい匂いがするな」そして、チュッと軽いリップノイズを残して私の首筋に唇を寄せる。「他の男が寄ってこないか、いつも心配しているんだ」そういって、チュとそこにもキスを一つ落とす。いつものバダップらしくない、と抗議しようと振り向いたときに熱い視線とぶつかった。「いつも、こうしたいと思っていた。だが、外でそういうことするわけにはいかないだろう」至極まっとうな意見である。外でこんなことされたら恥ずかしくてもう町は歩けない。



「それに」前に回り込み今度はリップをつけていた唇に口付ける。「俺自身がそろそろ歯止めが効かなくなりそうなんだ、許してくれ」今まで口付けの一つもしてこなかった男が急にどうしたんだ?!と混乱し、疑問符を浮かべていたら。ああ、そうだ、彼も同じなんだ。逢えない時間を寂しいと思ってくれていて、逢えない夜は同じように星を見上げてくれていたんだと。「お前に逢えない時間は、お前がとても恋しく思う」彼も人の子なんだ、だから、寂しいとか恋しいとか私にたいして思ってくれたんだ。それが凄く嬉しくなって、バダップに不意打ちで抱き着いてみた。鍛えているのだろう、全く動じずに私の背を撫でて慈しむように、首筋に顔を寄せた。



「逢えない夜は気が狂いそうだ。本当はもっと沢山逢いたいと思っている、お前と沢山、同じものを共有したいと思っている」だから、今日は自宅に招いたんだと、バダップは言った。それから、「お前の初めてを全部俺にくれ、口付けも抱擁も体温も。俺の物も全部くれてやる」と真剣なまなざしで私を貫いた。私なんかでいいのだろうか、バダップの全てを受け入れる皿としては少々狭すぎる。だけど、「うん、私で良ければ全部貰ってよ」言葉が勝手に紡がれていた。バダップはそう言ってくれるとは思っていなかった、僥倖だ。と言って私を横抱きにして、寝室へと向かっていった。怖いけれど大丈夫、私の全ては彼に捧げているのだから。

title Mr.RUSSO

あとがき

糖度は何処に行ったんでしょうか……。バダップの性格がドンドン見失われて最終的に誰こいつ状態に陥りました。


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