どしゃぶりの真ん中で




(・イシガシでGCG終了後、ファラムで暮らすイシガシと夢主がくっつきそうでくっつかない、もしくはくっついているのに扱いがあまりよくない)


グランドセレスタ・ギャラクシーを終えた私たちは、ファラムに残り生きることに成った。地球人である、私は地球に帰らなくて本当にいいのかと何度も問われたけれどイシガシさんと付き合っているので超遠距離に耐えられない私はうん、と頷いて葵ちゃんたちと別れた。これが永劫の別れだとしても私は此処で生きていくだろうし、葵ちゃんはずっと友達だ。最後に抱きしめて、涙を零したけれどイシガシさんは私たちを生ぬるく見守るだけで、抱擁が終わる頃には執務に戻ってしまっていた。イシガシさんは嫌いじゃない、だけど、たまに距離を感じる。それは人種の違いかもしれないけれど。



イシガシさんは一度執務に入ると中々出てこない、私がお茶を入れてイシガシさんの執務室を軽く手の甲でコンコンと何度か叩いて、失礼しますなんて儀礼的な礼を行いイシガシさんのテーブルにお茶を置く。「イシガシさん、たまには外に出て、息抜きなんて……」どうでしょうか、って書類で前が見えないイシガシさんにそう提案するも数秒で却下される。「名前、この量を見てそんなことがよく言えますね」オズロック様はもっと多い量をこなしているだろうけど、イシガシさんも多いと思う。「そうですよね、すみません」明らかに落胆していたがあまりそう見せない様に気丈に振る舞って見せた。でも、私はイシガシさんが心配なのだ。この量を毎日のようにこなしていて、しかも、お世辞にも良いとは言えない顔色をさらに悪くして睡眠時間まで削っているそうじゃないか。



それを心配せずに、彼女を名乗れるわけがない。なんとしても息抜きをしてもらいたいのだが……。勿論、私利私欲もある。何故ならば、扱いがいつもぞんざいなのだ。あの日、ずっと好きでしたって言ってもらったのが嘘みたい。イシガシさんはずっと地球代表アースイレブンを引き連れているときに選手である私の事を気にかけてくれていたらしい。その感情に気が付くのには随分と時間がかかってしまったらしいが(憎しみと復讐に捕われていたから仕方ないと言えば仕方ないのだろうが)。私は溜息を一つ零して、執務室から出て行った。邪魔に成るだけだから。



自分の部屋に戻って思考する。イシガシさんは、態度も変わらない。あの日好きだと言ってくれて顔を赤らめていたくらいで、全く進展もないし、寧ろ後退している?レベル。そうなってくると、此処にいるララヤ様以外に話し相手も居ない私には段々と地球が恋しくなってしまう。やっぱり、私には身分相応に地球の男の子と恋愛をすべきだったんだ。異星人なんかと恋愛したからこんなに、苦しいんだ。そう思い始めると、涙が出てきて止まらなくなってしまった。一度出たものは引っ込まないし、ああ、困ったなぁ。「うぅ、うっ、」帰りたい。地球に帰りたい。こんな辛い時にもイシガシさんは隣にいてくれない。



そして、帰ろうと決めた。ララヤ様にそう話すと「そうか。寂しくなるのぅ、わらわの話し相手、友人として大好きじゃぞ」とまだ幼いララヤ様と抱擁を交わして、私は地球へと向かうであろう宇宙船に乗りかけたその時だった。「何処へ行くんですか?!名前!」珍しく声を荒げたイシガシさんと対峙してしまった。面と向かって話したのは久しぶりだったかもしれない。いつもは私を見てもくれない瞳が今日は私だけを映していて、驚いた。「執務はどうしたんですか?まだ、「そんなことを今、聞いていません」そう、遮られてしまった。仕方なしに説明を端折って「地球に帰ります」とだけいった。イシガシさんは今にも頽れそうだった。



「何故、地球に?」「イシガシさんに関係ないじゃないですか。寂しくなったから、辛いから帰るんです」そういって、踵を返し宇宙船に乗り込もうとすると強い力でイシガシさんに腕を掴まれた。驚いて私は慌てて振りほどこうとしたがびったり吸盤のように離れなかった。「もうやめてください、イシガシさん。私は身分相応に地球の男の子と恋愛します、今のままでは苦しいです」まただ、最近は感情にブレーキをかききれず涙腺が崩壊してしまった。「……、すみませんでした。貴女を愛している気持ちに嘘偽りはありません」イシガシさんが頬に少しだけ紅を入れたかのように染めていた。



「だから、地球に帰るのも、地球の男性と恋するのもお願いですからやめてください。私には名前しかいないんです」そう言って、精一杯だったのかもしれない。初めて、イシガシさんに抱きしめられたのだった。

title エナメル

あとがき

リンクの件有難うございます!数だけサイトですが、これから仲良くしていただければ嬉しいです!地味に、イシガシさん初めて書きましたが、お気に召していただければ嬉しいです!


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