はなむけのファンファーレ




(・浪川、押し倒してお仕置きする)
15推

俺が怒っている理由なんて名前には到底理解に及ばないだろう。だって、これは俺の身勝手な考えであり、名前は本当は微塵にも悪いなんて思っていないから。ただ、ただ、俺の苛立ちや憎しみのような感情が渦巻いていて、その渦中に俺がいると言うだけだ。名前を押し倒した時の名前の顔が目の裏側、脳裏に焼き付いていてじりじり離れない。まあるく見開かれた瞳と、零れんばかりの涙の膜。さりとて、俺も此処で引くわけにはいかなかった。「名前、言ったよなぁ。野郎どもに色目使ったり媚を売るなって」そうだ、嫉妬だ。そして、名前は野郎どもに媚を売ったり色目を使ったりしているんだ。(本当は、嘘、わかっている)



「あ、あの、連助、違うの」問答無用とばかりに唇に噛み付くようにキスをして荒々しく、何度も角度を変えてはそれを繰り返した。唾液を流し込んで、飲みこませる。名前は嫌々ながらもそれを飲みこんで遂に堪えきれなくなったのだろう。涙をぽろぽろと零してしまった、俺はそれの筋を追いかけて涙を舌で味わった。それは荒々しい海の味とは違って繊細な味がした気がする。俺の涙もこんな味がするんだろうか、俺はそれから首筋にキスを落としてチウときつく吸い付いた。そうすると、ほら。俺の物だって証が出来上がる。俺はそれに少しだけ優越感と満足感を覚えて、更に沢山作っていく。まだ冷えるからマフラーとかして、誤魔化すかもしれないけれど、そんなの俺が許さない。



野郎どもにこれを見せつけて、俺の物だって叫びたいぜ。名前は最初のうちは抵抗していたと思う。だけど、段々と意識がもうろうとしてきたのか酸欠にでもなったのか、動きが鈍くなってきた。そしてやがては四肢を投げ出して俺に身を預けた。俺はそれを僥倖と捉え、胸を揉みしだいた。優しさなんて欠片も無く俺本位の物だったと思う。それから、先はいけないって理性が俺を押さえつけていて(わからないっていうのもあるけど)何もしなかったけれど、名前は酷く怯えてしまって、顔色が悪くなっていた。



翌日やはり、名前はネックウォーマーを付けて登校してきた。勿論部活の時に外させて俺だけの物だって、証明させてもらうけれどな。「名前、」俺の呼びかけに呼応するように振り返る。笑顔が途端に引くついた。筋肉が強張っているのが分かる。昨日のが余程怖かったらしい。「ごめんな、もうしねぇから」名前の同意なしでは絶対にしないからと言うとへにゃりと、いつものように少し間の抜けた顔をして笑って見せてくれた。どうやら許して貰えたらしい。



練習終わりに名前のネックウォーマーを外す。無理やりだった。喜峰やら湾田はうわぉ、と言ってそれきり口籠ったが、凪沢なんて真っ赤にして顔を俯かせて何かを呟いていた。聞き取れなかったが。湾田に礼を言うと湾田は良いってことよって歯を見せて笑った。そこでようやく事の元凶が誰かを把握してしまったらしい名前が湾田に詰め寄って胸元を掴まんばかりで睨みつけた。「怖かったんだから!連助いつもの連助みたいじゃないみたいで!余計な知識を埋め込まないでくれる?!」「わりぃわりぃ」心の籠っていない謝罪に名前は納得いかないようだったが、これ以上食い下がっても無駄だと判断したらしく、大人しく後ろに下がった。



「つまり、湾田の入れ知恵と」俺を睥睨しながら眉間に皺を寄せている名前に口籠り。暫く経ってからすまねえ、とだけ呟いた。すっごく怖かったんだから。とふくれていた。その仕草が可愛くてまた、野郎どもにとられちまうんじゃないかってはらはらしたが俺は息を深く吸ってはいて、その気持ちを何処かへ追いやった。「悪かったって……」確かに入れ知恵をされたのは事実だ。だけど、湾田のせいだけには決してできなかった。だって、俺は。



俺はあの日俺の欲望に忠実に生きた、獣だったのだから。湾田の助言が無くても俺はきっとああいうことを名前に何れしていたと思う。ただ、それが早まっただけの事だ。名前は相変わらず湾田の愚痴をぐちぐちと言い続けているが、まあ、いい。俺の中に眠る獣はまた、当分冬眠させてやらねばならない。

title Mr.RUSSO


あとがき

浪川君であまり想像が出来ませんでした。あと、裏に成りそうだったので途中でやめました。お気に召さなかったらすみません。


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