君のその甘さにはキャンディーだって適うまい
  



俺の周りをうろちょろする女がいる。別段、害があるわけでもないので放って泳がせているのだがどうにも目障りだ。何をこそこそ嗅ぎまわっていやがると思いきや俺に大量の飴を押し付けてきやがった。どういうわけか俺にくれるとのことだ。俺に取り入ろうっていうのか?と思いきやそうではないらしい。俺がサボっているとたまに会うことがある。待っていただの、なんだのうるせぇ。そして決まって飴を貰う一個、二個ではなく大量だ。あいつのクレジット大丈夫か。と柄にもなく心配してしまった。女に貢がれるのは悪い気はしないが。これだけ買うとなると、結構かかったんじゃねェか?



「毎回思うけどよォ、棒付きじゃねぇとあんまり食わねェんだよ」そういって殆ど返した。それでもまあ、飴にはかわりがないので、いくつかは貰っておいたが。「あ、そうなんだ。これ、どうしよう」友達は食べてくれるだろうか?自分ではこれだけの量を消費できないとしな垂れるので俺が悪いみたいな雰囲気に成ってきやがった。とんでもねぇアマだ。俺に全部押し付ける気か。少し苛立って食べていたいつもの棒キャンディーをガリガリと噛んで粉々に砕いた。「チッ」「伊丹君ってどれくらいキャンディーに費やしているんですか?」「知るかんなもん」興味津々といったようで付き纏ってくる。うぜぇ。



あいつは俺の事でも張っているのか?何か知っているのか?何で俺のサボる時に限って、居るんだ。引き返そうと思ったがこの間ので学習したのか今度は棒付きのキャンディーを少しだけ差し出した。「今月苦しいからこれだけ、」「……フッ」どうやら、この間大量購入した飴が響いているらしい。困り顔を張り付けた。鼻で笑って、それをポケットに突っ込んだ。棒付きなら俺の常食だから、あっても困りはしねェ。しかし、なんで俺に飴を差し出してくるのかわからなくて、段々と俺もこいつにうざいとか以外の興味がわき始めていた。



例えば、まだ知らないお前の名前とか覚えてやってもいいかもしれない、なんて柄にもねーことを思い始めるのだ。それが何の始まりか、少なくとも俺の中の世界が動いたのには違いねェ。丸い飴玉に歯を立てて。


title リコリスの花束を


*キョウジでほのぼの頑張れないだろうか?と思ってしくじった奴。

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