堅物ビターチョコレートを溶かす
  



ムラクさんの崩壊劇。


先ほどまでの盛り上がりも無かったことに成り、今はもはや葬式のムードと言っても差支えないくらい静まり返っていた。先ほどまでの賑やかな昼食を返してほしい気分だったが、悪いのは私と悪ふざけをしていた友達なので(因みに罪の重さの度合いで言ったら間違いなく私で、天秤にかけたら友達は私を見下ろす形、若しくは吹っ飛んで行ってしまうだろう)何も言い返せなかった。ただ、申し訳ないとバイオレットデビルに詫びるばかりだった。まさか、本人が来るなんて思ってもいなかったが、こういう時は大抵決まって一番聞いては成らない人物が来てしまうのである意味、決まっていた事柄なのかもしれないと頭の片隅で思った。



取り巻きのお仲間も複雑そうな面持ちで、困り果てていたが、バイオレットデビルだけは違った。不愉快だと暗に訴えかけてくるのである。折角の美形なのに、眉間に皺が寄ってしまって台無しにしてしまっていると本人は気づいているのだろうか?(気づいていたらとっくにやめているか、そうか。この自答自問がいよいよ虚しいの境地に入ってきているのだが、それについてはもう触れないぞ)因みに友達はそそくさとまだ、食べ終わってもいないのにトレーを持って離脱してしまった。この私を置いてだ。詰まり私は生贄に成るのだ。このバイオレットデビルの餌食に成るのだ。「すみませんでした。悪気は無かったんです。ロストさせないでください」「仲間をロストさせる馬鹿が何処にいる」



そう、もっと最悪なのはバイオレットデビルと呼ばれるムラクたちと同じロシウスなのだ。これを不幸と捉えるか、不幸中の幸いと捉えるかは人によってさまざまで意見がわかれるだろうが、私は敢えて不幸と捉えている。だって、気まずいじゃないか。この中でこれからもよろしくどうぞとお付き合いしていかなければならない私の身にもなってほしい。友人もそうだが。彼女はしたたかなのできっとうまくやっていけるだろう、それに対して私は不器用の代名詞と言われるくらいやばい人間なのできっとこれからも、きっとこのぎこちない態度に成ること間違いなしだ。「ですよねー。あはは」



なんでこうなったかの経緯といえばだ。あのムラクの手袋にあった。あれを見て私が最初に潔癖症か?と友人に話題を振ったところ、勝手に私たちの中で話し合った結果、重度の潔癖症で皆が触ったものには決して触れられないとの結論に達した。それからどんどん、ヒートアップして行ってそれはとどまることを知らなかった。「いやー。ムラクって、絶対好きな女の子がいても、手とか繋げないよね!ばい菌がーみたいな?」から始まって「それだと不潔と言ってちゅーも無理っしょ!はははははっ!」「あり得るあり得る!ぶっふー!あとでアルコール消毒だよね!」「……誰が不潔なんだ」その声に振り返り一気に血の気が引いていく、顔面蒼白の私たち。真っ先に我に返ったのは、友人だった。



「じゃ、じゃあ、私食べ終わったから行くねー!レポート作んなきゃだし?!」そう言って脱兎の如く逃げ出した友人、私もハッとしたような表情を作って「やっば、そうだレポート!」とかあらかじめ脳内で用意された台詞を棒読みで言って逃げようとしたのだが、ムラク張本人に阻止されてしまった。人生の終了を告げるベルが鳴る……。短かったなぁ……まだ、十数年しか生きていないよ、マッマ。



そして、最初に戻ります。謝り倒しても許して貰えそうにない、スワローで何か奢りましょうか皆様に?と言っても縦に頷いてくれないし本格的にバイオレットデビルに嫌われてしまった。これって、やばくないか。うん、やばい。最初にムラクが喋りだした。「潔癖症ではない」「はあ、そうですか」「そうだ。だから、その誤った考えを改めろ」「はい」説教みたいになってきているが、取りあえずそうなのかと信じられないまま頷く。だって、いつも手袋しているし、脱いでいるところ見たことないし信じられる要素がまるでない、本人が言っているのに信憑性が低い。



私はきっと疑いのまなざしを向けていたのだろう、ムラクもそれに気づいたらしく手袋を脱いで私の頬に手を滑らせてその後に驚いて警戒を怠っていた手を難なく握った。「わかったな?」「あとでアルコール消毒するんでしょ……多分。実は今すぐ、消毒したいとか思っているでしょう、人ってばっちいですもんね」「まだ、いうのか」バネッサちゃんが呆れたように言った。はぁ……とムラクも溜息をついていた。もういいと諦め立ち去るようだった。が、先にお仲間御一行を先に帰らせた。そして言った言葉とはこれだ。もうキャラ崩壊も甚だしいよ、バイオレットデビル。「因みに、好きな女子とならキスもしたいと思う。例えば、お前とならしてもいいきがする」「ばい菌沢山なのに気に成らないんですか?」あれってばい菌の交換らしいですよと言ったらまた、溜息をつかれた。本日二度目である。


title Mr.RUSSO

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