恋文と言う名の脅迫状を




最初に申しあげておきます、殿方に宛てる文等と言うのはわたくしは、得意にございません。何分、殿方からあのような心の内側から振るわせられるような、……恋文を頂いたことが無いからです。嫌と言うわけではございません、寧ろ大変うれしく思います、しかし、同時に驚いたというのも事実であります。わたくしは、このように身分も低い女官でございます。貴方のような、大変ご立派な殿方に好かれるような要素など欠片ほどにもない者でございます。ゆえに、ああ、断るなどと大それたことは出来ないのですが、許しを請わせていただきとうございます。どうか、どうか、考え直してくださいませ、わたくしと鍾会殿では、身分の差が大きすぎます。



許さん、許さんぞ。言っただろう、私はお前を貰ってやると。何故に躊躇い断る要素があるというのだ。私は女からも引く手あまただぞ。この機会を逃せばお前にこのような機会は二度巡ってくるはずもない。だから、さっさと、私の妻に成るのだな。大体、私からの完璧な恋文を、遠回しとはいえ断りで返すとは何事だ。お前は作法も礼儀も知らないのだな。いいか、次は無いぞ、私の顔にこれ以上泥を塗るなよ。私がお前を娶ってやる、正妻の座はお前の物だ。どうだ、嬉しいだろう。お前も鍾の一員に成れるのだ。



ああ、鍾会殿、矢張り貴方はわたくしには恐れ多く思います。わたくしは、鍾会殿の力に少しでも成れるのでしょうか?……お傍に居てもいいのでしょうか。わたくしは貴方が思っているよりもずっとずっと、価値のない女官風情にすぎやしないのです。お戯れがすぎます。



お戯れだと?私は一体何故にお前の中で、そんなに信頼度が無いのだ。解せぬ、解せぬぞ。力に成るなどと烏滸がましいと自分で思わないのか?私はお前の才が私より上だとは思っていないし、力に成るなどとも思っていない。……まだ、言いたいことが分からないのか。とんだ、阿呆だな。私はそんな阿呆に惚れているのだから、本当に何が起こるかわからん。しかし、これだけは誓ってやろう。私は、お前を不幸にすることはないだろうとな。


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