来世でまた会いましょう




夢主、頭可笑しい。



訳が分からなくなって、頭がこんがらかって、大量のエラーが発生していて処理に追われているのかもしれない。強制終了なんて強引な手段を取れるほど、この世は甘くなどない。その強制終了が永遠の私の人生の終了に成るかもしれないのだ。キッと強い意志を宿した瞳が私は大好きだった、クルクルと癖のある茶色い髪の毛が、彼の自慢話が、好きだった。眩暈がするような程に血の独特の匂いがして私は倒れてしまいたかった。大地を強く踏みしめ、平静を保っているふりをしながら鍾会を見つめた。私は作りたかったのだ。彼の望む世界を。だけど、実際はどうだ?



「貴女は、    」その先の言葉がよく聞こえなかった、愚かだと嘲笑したのかもしれない、私の事が大嫌いだと言ったのかもしれない。暗愚である、君主に相応しくない、当てはめる言葉など言葉遊びの様になんでもよかったのかもしれない。その情景に見合う言葉で、相応しい言葉で良かったのかもしれない。実際問題、今の私には大した差も無かっただろう。未だに目の前は色を失ったまま、白と黒とそれからたまに赤と。鮮度を失ったまま。進んでいる。



「鍾会、違うんだ。鍾会、」何が違うんだろう。これからする盛大な言い訳を頭のいい彼は都合よく処理してくれるだろうか。私の言い分を聞いてくれるだろうか、ああ、本当に。私は民の為だとか、父上母上の為でもなく、愛する彼の為だけに世界を変えようと思ったのだ。彼が、この世界を望むのならば鮮やかな赤いリボンをつけて丸ごとプレゼントしよう。彼に好きな女性が出来たのならば、兵を全て駆り出してその女性を探しだし彼のお嫁さんにしてあげよう。私は彼の望みを何でも叶えてあげられる、魔法使いなのだ(悪い、魔法使いなのだ、妖術を使って惑わし人々に混沌を招く悪魔なのだ)。



「私は、ただ、鍾会の望む世界を作ってあげたかったんだ」私を哀れんだような蔑んだような瞳(両方を包含していたのかもしれない、きっとそうだ)で見下して鐘会は薄い唇を開いて、一つ一つ言葉をはじき出す。どれも受け入れがたい物ばかりだった。「誰が、そんなこと頼んだ?私が望む未来も世界も貴女には作れない」そして、貴女は私の作りたい世の前に立ちふさがる絶対悪だ。地面に突き刺さっていて役目を終えていたと思われた数本の剣が、不意に宙に浮いて私に全て向けられた。折れているものも含まれていて完璧主義者の彼らしくないなぁなんて少し思った。余裕をぶっかましていられるほど私の、頭は冷静じゃない。ただ、現実を直視できずに逃げているだけだ、何故、捕食される弱い動物が自分の食べられる瞬間を考えなければならないのだ。死に至るまで必死に生にしがみ付いていたい。心の奥底で、冗談だと、本当は生きられると思っていたいのだ。「鍾会、私は後悔をしていないよ」



愚かしく、混沌を招いた私に相応しい最後なのかもしれない。笑いすら込み上げてくる(同時に涙も。私のしてきたことはなんだったのだろう、何の意味も無かった、何の意味も見いだせなかった)。「鍾会、最高だよ。鍾会の手で直接死ねるだなんて、最高だよ、鍾会!」一思いにどうか、突き立ててくれ。ああ、ただ、少しだけ欲を言うのならば。鐘会、貴方の望む世界が見てみたかったなぁ。私の作る偽りの箱庭でなくて、本物の、鍾会の描いた世を。

title リコリスの花束を


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