私のライフはゼロです




人のせいにしたり八つ当たりをするなどもっての外である。人としての道を少し踏み外したような人間がああなるのだ。だけども、当事者の一人である人を見つめれば憤る気持ちもよみがえってくる。それは、寧ろ人間味があるという事なのかもしれない。だが、自分自身が情けなく思ってしまうのもまた、事実である。だから私は縋るような気持ちで彼に許しを乞うたのだ。「勘弁してください、自陣で妙な遊びが流行りだしました。私の事を少しでも哀れんでくれるのならばもうやめにしてください」「妙な遊びですか?はぁ、私はそのようなこと聞いていませんが」「敬語もやめてください、それがまた不振がられる要因の一つではないですか!」元の関係を思い出してください、私は貴方の上官ではありません。寧ろその逆の貴方の配下ですよ!?と感情任せに言えば険しい顔がしょげているように見えた。いつもは険しく近寄りがたい雰囲気すら醸し出しているというのに今や、その鉄壁の盾もない。



「大体、私には諸葛誕様のような妙な性癖は無いです!いたって普通です」狗だの、なんだの上官を罵るような性癖は決してない!恐らくこれからも目覚めることはないと思われる。私の性癖はとても一般的な物であり、常識的な範疇だ。大体、諸葛誕様でなければ、今頃この首と胴体は繋がっていないだろう。いわば打ち首だ。ああ、恐ろしい。諸葛誕様が、直々に頼み込んでくるから恐れ多くも数度、(恐る恐る地雷が無いかを確かめながらだが)罵ってあげただけなのだ。それだけにすぎやしないのだ、深い意味などそこには存在しないのだ。上官の頼みを聞いたただの配下なのだ、それ以上でもそれ以下でもないのだ。ああ、こうして普通にしていらっしゃれば素晴らしい人格者であり、人望も厚い人だというのになぜ、なぜ、神はこのような欠陥を残して産み落としたのだろう。私が神だとしたらこのお方からこの妙な性癖を取り上げて差し上げたいくらいだ。



ああ、また陣中で一般兵たちが奇妙な遊びをしている。あんなに隠してきたというのに一体何処で、目撃されたのだろう。泣きたいです。諸葛誕様も諸葛誕様だ、あのような事をして何が楽しいのだというのだ。あれか、そこに一瞬の触れ合いがあるならとか。何と言われても、その人の口から言われる言葉であるのならば嬉しいとか?うわわ、理解しがたい。未来永劫に理解したくない。そちらの領地へ踏み入りたくなどない。兎に角として、私は元の関係に戻りたいのだ。ああ、諸葛誕様、私を哀れに少しでも思うのであればもうやめにしてください。私のライフはもうゼロです。


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