セイ・ハロー・トゥ・ミー




夢主死んでいるっぽい。


憶測で物を言うな、

寂しそうに、でも、私を心配させまいと私を泣かせまいと笑みは絶やさずに名前殿は言った。何故に断言できるというのだ。あり得ぬ、あり得ぬ。事実は打ち消しても姿を変えずにそこにあり続ける。更なる嘘で上塗りをしても変えようはあるまい。何故、あの時あのように言い切った。私にそう思い込ませるための妖術か、はたまた、名前殿の願いか。どちらにしろ、今の所嘘でしかないのだ。そして、恐らくはこれからも真実に成り得ることはないだろう。私は脳内で名前殿が言った言葉を何度も何度も、繰り返した。過去に囚われている。私は未だに、過去を生きている。未来を生きられぬのだ。希望など欠片でもあっただろうか?人々はそんな私を悲しい人だ、哀れだと言うか。若しくは、男らしくない、病でも患われたのではないかというかの両極端である。世間の目など、世間の言葉など……、所詮、同じ傷を負わねば私と同じ気持ちを抱くこともあるまい。私の気持ちの何がわかるというのだ。私は彼女を愛しているのだ。



「きっと、忘れるから。きっと、いつか時が癒してくれるから。直ぐに私よりいい女性と巡り合えるから。幸せに成れるから。私は幸せだったよ、諸葛誕殿」何度思い出しても、幸せそうに或いは(愛おしげに)。私の頬を何度かその手で撫でて往復して。ゆっくりと地へと吸い込まれていくように重力に従って。「あ、あ」何が、私よりいい女性だ、何が幸せだ、何が時が癒すだ。本当にそうであればどれ程、幸せか。私は未だに過去に囚われたまま生きているじゃないか。これが現実だ、貴女の望んだ理想などとは程遠いぞ。いいや、真逆と言っても過言ではない。真っ黒に塗りつぶされたままだ、



あのようなことを平然と言える貴女に何がわかるというのだ。貴女は憶測で物を言い、大きな傷を、爪痕を残すだけで、私の傷を癒してなどくれやしない。ただ、新しい生傷を作ってにっこり嫣然と笑う。そして、最後に消えない大きな傷を残して逝ってしまった。彼女は酷薄である。私は冷然としてなどいられない。狭い視野に貴女は留まったまま、微笑を浮かべている。いつか、名前殿の言うように傷はかさぶたを作るのだろうか?作った後に、その傷は肌の色と同化してしまうのだろうか?嘘だ、完璧に消え失せたように見えるけれどよくよく、目を凝らせば傷は残っているのだ、



憶測で物を言うな。これが、今を生きる私の現実で、私の今の真実である。狗とでもなんとでも罵ればいい。私は彼女を愛している。だから、次の伴侶など娶るつもりもないし側室もいらぬ。だから、門前払いにしていた。ああ、貴女は大嘘つきだ。一つも貴方の言っていたことは当たっていない、ああ、あ、あ。彼女のお願い、だというのはわかっているのだ。それでも、私は貴女の最後の真のお願い事を聞いてあげられそうもない。「わたしをわすれてください、しょかつたんどの」


憶測で物を言うな、
私の現実は貴女の憶測や願いでは覆せない。


title 月にユダ


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