緑川



!名前出てないけど緑川。へたれています。


最近気になる子が居る、その子はいつも犬の散歩のルートでこの公園の前を通る。俺はそれを声もかけることも出来ずにただ、その背中を見送るだけ。何処の子とか、何歳とか、名前とかも一切わからない。ただ、俺が知っているのは、この辺を散歩しているということだけ。そんな他人の俺がいきなり声をかけるなんてできるわけもなくて。あーあー!このままでいいのか、俺!いいわけないだろう!せめて、名前を聞くとかそれくらい聞く勇気くらい……!



そうこうしているうちに、あの子が通る時間になっていて。あの子が俺の目に留まった。白い息を犬と一緒に吐いて一人で何処か遠くを見て歩いていた。……勇気を出せ、俺!思い立ったら吉日!だ
「あ、あの!」
少しだけ、近づいて話しかける俺。あ、やべ、なんか不審者だ、俺。女の子と初めて目があった。二重のぱっちりした目が俺を訝しげに見つめた。
「何でしょう」
「え、えっと、その、犬触っていい?」
俺のばかああああああああ!!違うううううううう!犬はワンとも吼えずに俺の足元に来て、匂いをかいでいた。まずい……触っていいとか言っちゃったけど俺あんまり犬は……。噛まれそうだし……。それでも、自分で言い出したことだ……と俺は手を恐る恐る犬へと伸ばした。
「大丈夫、噛まないよ。舐められるかもしれないけどね」
女の子のその言葉にまだ、俺は脅えながらも手が犬のふわふわの毛に触れた。
「ね?噛まないでしょ?」
女の子のその柔らかい表情に俺の心臓がどくん、と跳ねた。
「あ、ごめんね。もう帰らないと……。じゃぁ、サッカー……?の練習頑張ってね」
サッカーボールを見て、そういって女の子は犬を連れて家路へと駆け足で去っていってしまった。あぁ、俺の馬鹿馬鹿馬鹿!名前を聞きたいのに、俺の臆病者……!



でも、は、話せただけで収穫、そうだよな?そう、自分を納得させつつあの透き通る綺麗な声を思い出していた。


歩道

  


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