喜多海



名前の部屋に転がっていた毛糸玉、鮮やかな青色の毛糸玉。何か作っているのかな?もうそろそろ雪が沢山ふる季節になる。外は段々と葉が散り、枯れていっていた。もう寒くて薄着じゃいられない。
「名前、この毛糸玉どうしたべ?」
「うん?あー……小学生の頃の図工のときの余り、最近見つけたんだ」
あれ?僕の予想は外れたみたいだ。僕になんか作ってくれているのかなー。とかちょっと期待したんだけど。



「勿体無いべさ」
毛糸玉を手で軽く突くとコロンと一度転がった。鮮やかな青い毛糸が解れて、床に広がった。
「喜多海何しているの、猫みたい」
クスクス、名前が笑う、馬鹿にされているわけではないのだけれども何処か引っかかってしまう。
「でも、確かに勿体無いよね。でも、どうしようか。私何も作れないし」
図工のとき多分あまり、使わなかったのだろう。殆ど使われた形跡はなく、ほぼ開封したときの状態……新品だった。だから、流石に名前も捨てようとは思わないみたい。先ほど転がしてしまった毛糸玉を名前は拾ってくるくると解れた糸を巻いて戻した。
「本でも買って、何か作ればいいべさ。マフラーとか」
さりげなく僕の願望を混ぜてみる。
「喜多海に?恥ずかしいからやだよ」
僕の願望はあっさりと否定されてしまった。恥ずかしいからって……。僕の為に……とか、言われた日には思いっきり抱きしめてあげるのにな。



糸玉

  


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