三途



口に含んでいた飴を名前は噛み砕いた。やってしまった、内心少しそう思った。最後まで舐めきることができない。気がついたら、噛み砕いてしまうのだ。最早これは、名前の癖なのかもしれない。最後まで舐めてみようと、思ったこともあるのだが、なんだかこうしないと落ち着かないのだ。



別に困りはしないのだが、飴はやはり早くなくなってしまう。どうせ、同じ金額を払うのならば長く食べたいのだけれども。名前はもう一つ、飴を包装紙から剥がして口に含んだ。カラリ、口の中で転がる飴。
「……いいな、何味?俺にも頂戴」
「苺!ざーんねん。最後の一つだよ、三途」
本当?と疑わしそうな視線を向ける三途を見て、名前は飴の入っていた袋を逆さにして、振る。中からは塵一つ落ちてこない。なるほど、本当に最後の一つらしい。
「……意地悪」
さっきから、噛み砕いているからすぐなくなるんじゃないか。と、三途は鋭い視線を向ける。
「それは……まぁ、そうなんだけど。癖だし?小さくなるとつい、噛み砕いちゃって」
損な癖だよなぁ、と頭を額に手を当てた。
「まだ、噛んでない?」
「何とか、生きているよ。今は意識して噛まないようにしているから」
ほら、と口をあけて見せた。少し小さくなった硝子玉のような飴玉が小さく
舌先に乗っかっていた。



「本当だ、ねぇ、頂戴?」
三途が顔を近づけたのを合図に目をギュッときつく瞑る。生暖かい何かが唇に触れて、離れたのを確認して目をあけた。先ほどまで、口にあった小さくなった飴玉は三途の舌にあった。



移し

  


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