御影



!落ちなし。御影で大富豪しています。


本日も快晴なり、そして、連敗記録も更新中なり。いい加減一度くらい勝ちたいところなのだけれども、一度負けるとまるで底なし沼の如く簡単には這い上がれないシステムとなっているこの大富豪。誰だよ、一番初めに大貧民は二枚大富豪様にいいカードを献上しなければならないとかいうシステムを作った奴は。今なら怒らないから出てこいよ。あと何が悲しくて屈辱的なカード配りなんてしなければならないのだ。く、悔しい。



「名前、二枚頂戴」
啓は私が渡すのを渋っているのを見て、催促にきた。さようなら、ジョーカーと二。こんにちは、一番弱い三と四……。これで勝てとか鬼すぎるだろう。
「……先輩、大丈夫ですか?連敗ストップファイトですよー」
都築君が小さくガッツポーズを作って私を励ましてくれた。なんて優しい後輩…私は後輩にだけは恵まれているようだ。都築君は貧民だからなぁ……可哀相に。先輩たちにこうやって押しつぶされる後輩……あいつら鬼か!
「うん。都築君も頑張って這い上がってあいつらを這い蹲らせよう……!」
私も小さくガッツポーズを作ってカードを並べ始めた。
「這い蹲るのはまたお前じゃないの?」
富豪の改が私のやる気を削ぐようなことを言い出した。畜生、今に見ていろ。
「……俺はどうでもいい。最下位になってカード配る役にさえ、ならなければな」
巌、お前には這い上がろうという気はないのか。ぬるま湯天国か。平民羨ましい、平民になりたい。



「はぁ……。そろそろ一回は勝ちたいなあ……」
ぶつぶつと独り言をいいながら、並べていたらあることに気がついた。
あれ、私四、四枚ない?……何度目を擦っても四は四枚目の前にあった。あぁ、これは……大富豪への切符ですね。神は私を見捨ててなかったようだ!周りはもう勝手に進めていて、早くしろ。と目で訴えかけていた。私は、それを切るべく一番強いカードを出して流す。皆は目を丸くしている、「ついに、勝負を投げたか」といわんばかりに。だが、私は勝負を投げたわけではない。
「くくく……私の天下が来たようだな……」



革命!と言ってカードを真ん中に出したとき、丁度呼び鈴が校舎に響いた。
「え?う、嘘……」
「あ。ぼ、僕もう一年の教室に帰りますね!失礼しましたー!」
都築があわただしく、席を立って、教室から出て行った。
「……名前、短い天下だったね。次、頑張って」
啓も自分の席に戻っていく。
「……俺も教室戻る。片付け頼んだ」
「そ、そんな……あのままやっていたら絶対私勝っていたのに……」
がっくり項垂れていると、改も片付け頼むな。といって離れていってしまった。なんて、薄情な奴らだ。こうして、私の連敗記録は更新されるのだった。


命!

  


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