マキ



マキちゃんはどちらかというと、綺麗って言葉よりも可愛いって言葉が似合う気がするけれどもその可愛らしい笑顔と、綺麗な髪の毛に惚れ惚れとしてしまうのだった。別に自分が大嫌いというわけでもないが、どうも劣等感と言うものを感じてしまう。あぁ、情けない。だけど、マキちゃんが可愛いから仕方ないと思う。



「マキちゃんって綺麗だよね」
マキちゃんはその言葉にきょとんとした顔をしたあとに不思議そうに口を開いた。
「マキ、そんなこと言われたのは初めてー。マキそんなこと思ったことないよ」
そうマキちゃんは答えた。なんだか、少し嫌味のように聞こえて私はムッとしてしまった。可愛いからこそ許されるのだろう。こういう言葉は。勿論、マキちゃんに悪意があるわけではないと知っている。つまり、今回のことも私の被害妄想と百パーセント決まっているのだ。



「マキは、名前のほうが綺麗だと思うけどなー」
無邪気に笑うマキちゃんが口元を抑えた。マキちゃんの癖だろうか。
「私をおだてても何もでないよ」
私は、少し照れながらも正直に言う。マキちゃんが大好きなお菓子も今は持っていないし。それを期待しているのならば無駄だ。
「別にマキ今、要らないー」
とまた、可愛らしく微笑む。マキちゃんずっと笑っていればいいのに。絶対モテるよ。
「……んー。あ、マキ一つだけ欲しいものある」
マキちゃんが考えるように腕を組んでいたと思ったら、急に顔をあげた。
「それもねー、世界でたった一つしかないの!」
……そんな、世界に一つなんて相当高価なものなのだろう。そんなもの私に手が届くはずもない。きっとマキちゃんにはくれてやることは恐らく出来ないだろう。



「マキね、名前が欲しいな。名前はいくらで買えるの?」
マキの、お小遣い全額でも、名前の心は手に入らない。と、寂しげに目を伏せた。長い睫が、ふるり、と揺れる。
「マキちゃんは、馬鹿だね」
「あー!馬鹿っていったー!馬鹿って言うほうが馬鹿なんだからー」
マキちゃんがさっきとは打って変わって、目をつりあげて私に言い返してきた。何処の小学生よ。と笑いたくなったがそれを押さえた。
「だって、私、最初からマキちゃんのものだもの。お金で買えるものじゃないけどね」
私の心はとっくにマキちゃんに奪われているから残念ながら私はもうあげられないわ。


いくらですか?

  


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