平良



!姉弟、死んでいます。平良と繋がっています。


心が酷く落ち着いていた。俺の下にいる姉さんは……名前は身じろぎ一つしない。先程まで話していたのが嘘のようだ。小さい頃から俺たちは一緒で、仲が良くてよく、いろんな人に名前と俺は仲がいいんだね。といわれていた。俺は満更でもなかった、俺のもののような、そんな気分になっていた。一緒にいた分、沢山喧嘩もしたけれど、喧嘩の数だけ仲直りも経験した。彼女やそういうものと違って、本当の別れはなかった。よく学校で「貞は、本当にシスコンだな」とか「姉ちゃん大好きだよな」とからかわれたっけ……。遠い昔のように思える思いでは随分と褪せてしまっている。



俺は姉さんを姉としてみているわけじゃなかった。いつからか忘れたが、遠い昔から姉さんを異性としてみていた。一番古い記憶だと「姉さんと結婚する!」と本気でいって親を困らせた記憶がある。結婚できるはずもないと今ならわかるが、当時の俺は理解できなかった。結婚というものは好きあっている男女がするものだと思っていたのだから。姉弟では出来ない、なんて……知ったとき俺はショックを受けた。俺は名前と一緒になることはない。他の男が姉さんのことを厭らしい目で見てくるたびに俺は嫉妬で気が狂いそうだった。姉さんは俺のものだ!何処の馬の骨ともわからないような、奴に姉さんを取られて溜まるものか!床に広がった俺と同じ色の髪の毛に指を絡めて、愛おしむように頬を撫でた。何で、何で、俺たちは姉弟なんだろう……。こんなに、こんなに大好きなのに、世界で一番大好きなのに。なのに……なんで!何で姉さんは俺じゃない男を選んだんだ!!



俺じゃ駄目だったのか……?姉さんの首筋についている赤い手形に俺の手のひらを重ねた。ピッタリとその手形とあう。そりゃそうだ……。姉さんを殺したのは俺だ。姉さんの首を絞めて殺したのは、俺、だ。だらり、と力なく横たわっている姉さんからはもう、生気を感じない。これで、もう姉さんが他の男を好きになることもない。他の男を見ることもない。で、も……。これで俺を見ることもない……話すこともない。姉さん、姉さん……大好きだった。パタパタ無意識のうちに涙が零れ落ちていった。それが姉さんの顔に落ちていく。まるで、姉さんが泣いているようだった。



カーテンの隙間から見えた血をすったような真っ赤な月が不気味に二人を煌々と照らしていた。月だけが俺のしてしまったことを見ていた。



い月

  


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