おとまり



とても楽しみで私は下着やらパジャマを小さな鞄に詰め込んで鼻歌なんか歌っていた。ああ、もうすぐ時間だ。今日は初めて冬花ちゃんの家に泊まりに行くのだ。友達の家に遊びに行くのなんて随分久しぶりだ。大体私たちは中学生だから、泊まりにいける日も限られているのだ。例えば、夏休み、冬休み……とか。そんな時くらいしかゆっくりできない。普段、部活やテストなんかに追われているのだから。幸い今日は部活も休みだ。鞄に詰めたものを最後に確認して、私は家を出た。鍵もちゃんと持っている。



少しだけ緊張しながらも、冬花ちゃんの家のインターフォンを鳴らす。軽い電子音が響いた後にバタバタと足音が家の中から聞こえて、ガチャリとドアが開いた。冬花ちゃんが薄紫色の髪の毛を少しだけ乱して、私を中に招き入れてくれた。「いらっしゃい。……待っていたよ」ふわりと、冬花ちゃんがいつも纏っているいい匂いが掠めた。監督は居ないのか冬花以外の気配を全く感じなかった。不審に思った私が尋ねる。「お邪魔しまーす。あ、監督は?」「……お父さん?今ね、出かけているの」冬花ちゃんを置いてだなんてなんだか珍しいなと思いつつも私はそれ以上その話題に突っ込むことはしなかった。



クスクスと控えめに笑顔を作って私を、自室まで案内してくれた。いかにも女の子〜なお部屋で綺麗。掃除も行き届いている、私の部屋とは大違いだ。荷物を床に置くと冬花ちゃんはお菓子持って来るね、って部屋から出て行ってしまった。初めて来た冬花ちゃんの家はなんだか落ち着かない。そわそわしているという奴だろうか。ひとしきりそわそわして、ぼんやりしていたら、冬花ちゃんがポテトチップやら色々なお菓子を盛ったお皿とジュースを持ってきてくれた。「……今日を楽しみにしていたの。ほら、名前ちゃんが来るから。今日は沢山お話しようね」「うんうん。私も楽しみ〜」「今日はね、私がご飯作るから、ね。」



わぉ、それは楽しみだ。冬花ちゃん料理うまそうだし。きっと、監督は毎日それで舌鼓を打っているんだ。羨ましいね。出来た娘がいると幸せね。監督はそういえば、いつ帰ってくるんだろう。「なんか食べられないものとかある……?」「特には……ないよ。冬花ちゃんにお任せで!」「わかった……。あ、そうそう……花火しようと思うの。ご飯食べたら一緒に、やろうね」花火!まさか、監督が出かけているイコール花火を買いに出かけているとか……?考えすぎだろうか。しかし、娘に対して激甘な監督……冬花ちゃんにお願い、と下から頼まれてしまえば断る理由すらも思いつかなくなるだろう。兎にも角にも、今日はオールナイト確定かな。



話すネタは沢山ある、それから、時間もまだまだたっぷりと。

  


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