星降



理想と現実はだいぶ違う、と言う言葉を聞いたことがあるが、実際問題理想と現実と言うのはだいぶ違うと思う。私のそもそもの異性のタイプと言うのは敷衍していけばもっと男らしい人で知的な感じの人で更にいうなら真面目な人の方が好み。だけど、彼氏ときたらそれとはまるで異なるタイプでだらだらと伸ばした髪の毛はピンク色で後姿を見たら女の子みたい。骨格で「あ、男の子か」と理解できるようなレベルだった。それでも何故か気だけはかなりあうようで、喧嘩どころかいざこざが起きたことはただの一度も無く、校内でも仲睦まじくやっている。勿論、彼の場合は顔がいいので女子とのトラブルは何度かあったけれどそのたびに香宮夜が割って入ってくれた。



香宮夜は以前に何度か私以外の女の子と付き合ったことがあるようだった。別にそれらは大した問題ではなかったのだけど、どうもあることない事、根も葉もないうわさが立つ。それは彼の顔立ちのせいだった。彼の顔はあまりにも整いすぎていて、神様に愛された子のようだった。香宮夜の家にて、今日思ったことを話してみた。相変わらず香水などの類やお洒落な物がちりばめられているが、月に関連するものも多い。普段かぐや姫などと揶揄される割に月は嫌いになれないらしい。月をかたどったネックレスやらが、その証拠だった。「実はさ、香宮夜って理想のタイプとはだいぶかけ離れているんだよね」やはりそういうのは、あまり気分がいいものではないらしくて顔をしかめた。



「ああ、そう」「でもねー、香宮夜は好きだよ。私、知的でまじめで男らしい人が好きだったらしいんだけど。理想と現実って違うよね」「俺が男らしくないと間接的に言っているな」姫と揶揄されるだけあって、男らしくないというのはタブーに近くなっている。だけど、男らしくないと言ったわけではなくて、と否定した。事実香宮夜の見た目は中性的だし、は香水だのなんだのおしゃれに気を使っているのでどちらかというと、体育会系の人と言うようには見えなかった。耳にもカフスを付けているし。「でもねー、いいの。好きになった人が私のタイプだから。だから、きっと香宮夜が私の好みなんだよ」



例え、自分の本来の好みである理想人物よりも目の前にいるこの香宮夜が大好きでたまらないのだから、私の好みはきっと香宮夜みたいな人なのだ。これからもきっとそう。恐らくは揺らぐことのない事実。「でも、本来の好みは俺みたいなのじゃないんでしょ、ちょっとショック」「ごめんね、でも香宮夜が好きだよ。所詮好みは好みでしかないんだなって思ったよ」好きになっちゃったんだからしょうがないんだよ。「へー、よくわからないけど、そんなに好みとずれていたか。ちょっとわかっていてもショックだね」「でも、好きだよ。ただ、一目見たときは整いすぎていて無いなと思ったけど。モテるし」これは代えがたい事実でやっぱり香宮夜が一番好きなんだろう。実際問題、見た目だけ好みの男子を見ても、あ、格好いいなとは思ってもそれ以上の事は無いしその分ガッカリさせられる部分を見せつけられる事が多い。その点香宮夜は性格面では一度もガッカリさせられたことはない。



「やっぱり香宮夜が一番っていう事かな、うん」「そう、それはよかった。俺もお前が一番だよ」お互いがそれならきっと本来の理想像とは違ってもうまくいくと思うんだ。


詮、理想は理想です


  


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