セイン



セインの長い髪の毛が気になる。いつも、あの長い髪の毛は一体誰が結っているんだろうか?まさか、自分ひとりで結んでいるとは到底思えないし。ギュエールあたりだろうか……?あ、なんかそれっぽい。あの子可愛いし。優しそう。だけどセインは「怒ると誰よりも怖い」と言っていたな。嘘だろうな。ギュエール私に対して優しいし。怒っているところなんて見たことがない。多分、手先も器用だと思う。想像していたら、なんか噴出しそうになってしまった。なんだか、お母さんと子供みたいだ。



「何、にやけているんだ。気持ち悪い」
悪態を吐きながら、腕を組んで私を見下ろしている。なんだってセインはこう威圧的なんだろう。もう少し穏やかに接することは出来ないのか?大体、女の子に対して気持ち悪いはないだろう。気持ち悪いは。鋼のハートを持っていたとしても傷ついてしまう。
「そこまで言わなくてもいいでしょう。セインは、誰に毎日髪の毛結ってもらっているの?」
「え。あ……最初は自分で頑張っていたぞ」
「……最初、は?」
最初はということは、今は自分で結っていないということか。今誰に結ってもらっているのか、気になるのにセインはそこから口を閉ざしていってくれない。
「別にいいではないか。貴様が気にすることじゃないだろう」



恥ずかしい質問だったのだろうか、薄っすらと頬に赤みがかかっていた。いつもと立場が違って、少しだけ気分がよかった。
「やっぱり、自分でそんな長い髪結えないよね。でも、セインの髪長いから結いがいがありそうだなぁ……」
長い髪を見ていると触りたくなるのは、人の性かもしれない。意外とさらさらだったりして。さっき酷いこと言われた仕返しに、グイッと少し力を込めてその長い髪を引っ張ってやった。
「いだだだっ!下界の者の分際で……っ!」
涙目のセインが睨みつけていたけど、涙ぐんだ目のせいで迫力はまるでない。少し、哀れになってきたので掴んでいた髪を離してやった。
「今度、私にも結わせてね」
頷いてはくれなかった。仕方ない、明日の朝押しかけてみるか。
ふっふっふ……覚悟しろよー。


  


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