緑川



どうも此処最近は、寒くなってきて乾燥してきている。肌はまだ、そこまで酷くないのだけれど問題は唇なのだ。カサカサとして、たまに血が出てしまうこともあるのでリップクリームは必須だったりする。


今も、ポケットの中に昨日買ったばかりのリップクリームが一つ入っていた。先ほどつけたばかりなので、今は唇が潤っている。匂いつきのリップクリームでなんだかさくらんぼの甘い匂いがする。それに、緑川は気がついたらしく「あれ?なんか、いい匂いするね。何かつけている?」と、私のことを凝視していた。あぁ、先ほどつけたばかりのリップクリームだな。
「あー。リップだよ。ほら」
ポケットの中に入っていたリップクリームを見せてあげた。
「へぇー。なんか、美味しそうな匂いがすると思った」
「緑川もつければいいじゃない」
五百円、ワンコインだせばおつりが返ってくるよ。



「んー……。いや、俺はいいよ」
緑川は何か気になることがあるらしく、私の顔に顔を近づけてきた。思わず、後ずさる。私は悪くない、緑川が悪い。
「何で逃げるの?何かしようとしているわけじゃないのに」
さも傷ついたといわんばかりの顔をする。
「い、いや、条件反射だってば」
「じゃぁ、動かないように気をつけてね」
そういって、緑川がまた顔を近づけて頬に手を添え逃げられないようにしたあとになんてことだろうか、奴は私のファーストキスを奪いやがった。唇を離す時に一瞬ペロッと、唇を舐められて悲鳴を上げてしまった。
「何するんだ!」
お、己……元抹茶ソフトめっ……!
「甘い匂いがするから、味あるのかな、と思って」
緑川、貴方はあれか、小学生の頃匂いつき消しゴムを食べちゃうような人ですか。

リップクリーム

  


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