不動



遠くから、お祭りの賑やかな音が聞こえてくる。それは少し離れた家の中にまで聞こえてくる。年に一度、家の近くで大きなお祭りがあるのだ。それが毎年、楽しみで私は仕方なかったりする。お祭り大好きなのは日本人の血なのかもしれない。ああ、わくわくが止まらない。隣にいる明王は私とは対照的にその音を煩わしそうにしていて、顔をしかめていた。興味があまりないらしい。



「あー。お祭り行きたいなぁ」
チラチラと明王の顔を窺いながら、そんなことを呟いてみる。明王は無視を決め込んでいるのか、顔を背けた。それでもめげずに、言葉を続ける。今度は直接的に言ってみる。
「ねぇ、一緒に行こうよ〜……」
ユサユサと寝そべっている明王の体を大げさに、揺らす。食べたいものが沢山あるのだ。りんご飴にふわふわの綿あめ、それからチョコバナナでしょ。あと……カキ氷も食べたいし……。明王はそんな私を煩わしそうに、瞳を歪める。邪魔をするな、と言いたげだった。慣れっこだから、そんなものには萎縮したりはしないが。ショックではある。



「祭りなんて、人ごみで面倒くせーだけだろうが」
行きてぇなら一人で行けよ。と付け加えて明王は目を瞑る。本当にお祭りには興味がないのだろうか。立ち上がる気配すらもない。
「えー……。お祭り一人で行くとか寂しいんだけど?」
友達と行ったら明王怒るくせに!理不尽だよ。しょんぼりと項垂れながら、明王に行きたい行きたい。と目で訴えかける。どうせ、無駄だとは思うけれど……年に一度の大きなお祭り、好きな人と行きたいに決まっている。僅かな期待を込めて、明王の服の裾をちょんちょんと引っ張る。その行動に、寝そべっていた明王が一度顔だけをこちらに向けたと思ったら立ち上がった。



「……行くぞ」
「え?!」
「大きな、声を出すんじゃねー。祭り、行きたいんだろう。さっさとしねーと置いていくからな」
服を掴んでいた手を離すと、明王はさっさとポケットに無造作に財布をつめて玄関に向かっていってしまった。私は急なことにポカンとしていたが、すぐに正気に戻って玄関に駆け出した。
「ったく、おせーんだよ。お前は」
片手をグイ、と強引にきつく握り締められた。痛いのに、暖かくて私は微笑んだ。


お祭り

  


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