源田



源田

ばっさり切られた、髪の毛がふわふわ揺れた。そういえば、前に「癖毛なんだ」と一定滝がする。ほんの昨日まで長い髪の毛だったのに、急にどうしたのだろうか。切るとか一言も言っていなかったのに、本当にいきなりで驚いた。まったく、謎だ。俺、何かしたっけ。いや、何もしていないと思う。多分。



「源田、どうしたの?難しい顔をして。……移動教室だよ、ほら、行こう?」
彼女が俺のほうへと手を差し伸べて、行こうと促す。理科の教科書を見せて、せかす。俺は机の中から、教科書と筆記用具を引っ張り出した。彼女の隣に立つ。彼女は、いつも学校にいるときは、恥ずかしがって俺の名前は呼んでくれない。悲しいけれど、彼女の意見は尊重したい。
「何で、髪の毛切ったんだ?」
どうしても、気になってしまいそう尋ねると彼女はキョトンとした表情を浮かべた後にすぐに笑う。
「何でだと思う?一、暑かったから。二、夏だから、三、気分転換」
「つまり、夏で暑かったから、気分転換も兼ねて切った、と?」



色々深読みした俺が、馬鹿だったのかもしれない。俺の顔から、自然と笑顔が零れ落ちた。彼女は「あ、」と言葉を漏らした後に、残念そうに眉を下げた。後悔が滲んでいた。
「源田、若しかして、髪の毛長いほうが良かった……?」
「まぁ、確かに……長い髪も似合っていて好きだったけど……」
「うー……」
「……今のも似合っていて、可愛いぞ」
くしゃくしゃと短くなった髪の毛を大きな手のひらで上下に撫でてやると、彼女が目を細めた。言ってしまった後に、俺は急に気恥ずかしくなった。俺らしくない、柄にも無い、と。だけど、彼女の幸せそうな顔を見て、俺はそんな気も失せてしまった。



バッサリ!

  


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