マビ



名前は自分がセカンドステージチルドレンとしての能力が目覚めてから一切の食べ物と水を拒否していた。もうそろそろ三日目に成る。それに対して心配していたのは、同じ仲間であるマビだった。仲間に成ってからは同じチームに属しているが名前は特に面識がなかったので彼の事が、煩わしくて仕方がなかった。しかし、マビは違った。彼は元来生真面目で、几帳面な少年。チームメイトが塞ぎ込んで、一切の食べ物を拒絶しているとなると放っておけなかった。勿論、それだけで此処までおせっかいを焼いているわけではないのだが名前はわからなかった。



「名前さん。少しでも何か食べられませんか?林檎とか、良ければすりおろしますけれど」「要らない」そういって、毛布を頭まですっぽりとかぶったまま拒絶した。顔は見えないけれど声は掠れていて、衰弱の傾向が見られたのでマビは益々心配してしまうのだった。「……なんで食べないんですか。僕たちでも、死にますよ。死は平等です。食べねば死に至ります。我々は不死どころか、寿命は極端に短いんですよ」僕たちでもという言葉にも反応を示さずに毛布をかぶったままマビには目も合わせなかったし顔も出さなかった。だけど、布団の中からくぐもった声が聞こえてきた。「死なないよ。私、化け物だもん。あんなに、お母さんが言ったもん、だから死なないもん。化け物は死なないもん」



「僕も化け物なのですか?能力があれば化け物に成るんですか?僕は貴女が化け物だとは思いません。可愛い女の子にしか見えないですね。見た目だけならば非力にすら見える」だけど、私たちはこうしてこの組織を通して繋がっている。我々は非凡だ。「私が死んでも悲しまないもん」お母さんだってせいせいするし、組織の皆だって、死がいつか私たちを別つことを知っている。寿命が短いから余計にそう。でも、誰も直せないし、病気とかじゃないからただ、享受しなければならない。死は恐ろしい物だと思いながらも受け入れるしかない。「……僕は悲しいですよ。仲間としてとかではなくて、きっと本気で悲しいと思います。出来れば長く生きたいですよね、気持ちはわかります。でも、出来ないからこそ、僕たちはエルドラドの人間たちに知らしめなければ成りません」確かに物語の中では悪者なのかもしれない、怖がられる役なのかもしれない。だけど、僕たちは僕たちなりの正義がある。



そういって、布団の上を優しく撫でて言い聞かせるように言った。名前は布団越しからの声だったのによく冴えて聞こえるような気がした。それはマビの能力なのかと言われればそうではない。ただ、鮮明に名前がマビの声を拾ってしまうだけであった。「……わかりますか?僕の気持ちが。僕は貴女に死なれたくないんです」今日はこの国に昔からあるといわれる食べ物を作ってきました。食べてくださいね、おにぎりっていうそうですよ。そういって何の具が入っているのかもわからないおにぎりを、テーブルの上に置いて立ち上がった。そんなマビを引き留める声が一つ。「……有難う」「どういたしまして」



逆光

  


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