エドガー



自分で言っていて空しくなるが、恐ろしいほど背が伸びなかった私は、どちらかというと身の周りで損なことばかりが起きている気がする。気というか、今現在進行形で困っている。身長がもっとあればよかったのに。少し背伸びをしても、届かない本に私は困ってしまった。台を持ってくるという手も考えたが微妙に指先が掠っているため、諦めきることができない。数度ピョンピョンとジャンプをして取ろうとしたが、やっぱり空しく手を掠めただけだった。台を持ってくるなんて屈辱的ではあるが、仕方ないか……とため息をついたときだった、少しだけ低い男性の声が横のほうから聞こえてきたと思ったら、そのまま私の取ろうとしていた本を軽々ととってしまった。



「この本がほしかったのですか?」
「あ、はい、有難うございます!」
相手の顔を確認するよりも先にお礼を言って、頭を下げた。日本人の特性というか、なんというか。きっと、私が飛んだり背伸びしたりしていたから、哀れに思ったんだろうな。あんな醜態晒すくらいならば、台を持ってくるべきだった。
「頭を上げてください、困っている女性を助けるのは当然のことですから」
その言葉に私はようやく顔を上げて本を受け取る。初めて相手を見た。男性はなんだか凄く綺麗な人だった。空のように澄んだ水色の長い髪の毛が蛍光灯に鈍く反射する。紳士的で端麗な顔。思わず見入ってしまった。



「……あ、届かなくて、台を持ってこようと思っていたので助かりました」
素直にもう一度礼を述べて、分厚い本を受け取る。
「そうでしたか、名前を伺ってもよろしいですか?この近くに、美味しい紅茶が飲める場所があるのですが」
「は?」
何、この展開。可笑しいでしょ。と、まだ名前も知らない美人な彼をジッと凝視する。それに何かを気づいたのか彼があわてて、詫びた。
「失礼、名前を名乗らずにレディの名を尋ねるなんて失礼でしたね。私はエドガーです」
そういって、私に向けて片手をだした。何かを言う暇もなかった。え、この後私はどうすればいいの?何をすれば適切なの?ていうか、完璧にあっちのペースに飲み込まれているじゃないか。頑張れ自分。

相手ペース

  


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