下鶴



!二人乗りは危ないです、やめましょうね。



偶然、今目の前を横切った悠々と自転車に乗ったピンク色に私は覚えがあって必死にそれを走って追いかけた。
「ちょ、改?!待って、遅刻しそうだから乗せて!!」
改だという確証は無かったけれど、私の知っている男子の中で薄いピンク色なのは彼だけで私は最後の望みを、これに託して呼び止めた。もしも、改じゃなければ私は此処で終わりだ。というか、違ったら恥ずかしくて蒸発する。私が呼び止めたことに対して目の前のピンク色がブレーキをかけて、止まった。そして、振り返る。やっぱり、改だった。改は不機嫌そうにこちらを睨みつけていた。



「二人乗りなんて、校則違反だ。お前はそのまま、遅刻しろ。どうせ、寝坊なんだろ」
「そ、そんな殺生な。お堅いこといわずに……お願いします!」
さっきから走ってばかりなため、息があがっている。息を整えながら改に頼み込む。改の奴、私にきっぱりと遅刻しろ、だなんて血も涙もない男だ。息苦しさに耐え切れずに咳き込んだ。そんな様子をじっと鋭い瞳で見据えていた改が諦めたように、私に乗るように促した。



「乗れよ、どうせお前、俺が乗せるまで粘るだろう……。ちゃんと落ちないように掴まれよ」
訂正します。彼は血も涙もちゃんとある血の通った人間です!有難う、改様!なんて調子のいいことをいいながら改の自転車の後ろに乗る。改の後ろに座ると、改の制服の裾を少しだけ掴んでバランスをとる。
「俺の服が伸びる!!」
「掴まらないと落ちるんだけど。……抱きついたら、怒るでしょ?うざい、とか暑い!とか暴言のオンパレードだと思うし」
「……なっ?!う、煩い!あんまりいうと此処で降りてもらうからな!」
改が急に自転車のスピードの速度を急激に落とした。私はそれに慌てて謝る。此処で降ろされたら、終わりだ。折角此処までこぎつけたというのに、遅刻だなんて笑えない。
「うわわっ!ごめんなさい!改様!やめてくださいっ!」
ふっ、と鼻で笑った改がまた自転車の速度をあげる。よかった、降ろされないで済みそうだ。



暫く平坦な道が続いていたと思った、瞬間ガタンと衝撃がくる。私が慌てて下に視線を向けると、砂利道だった。工事中だと悟った。そして、バランスを崩す。「うわわっ!」と変な声と共に、改の背中に顔面をぶつけてしまった。痛い。
「だから、危ないから掴まれって言っただろ」
「ご、ごめん。……掴める場所を教えてくれませんか」
顔面を思い切りぶつけた痛みに目を潤ませながら、言うと改が「俺に、掴まれば?」とぶっきらぼうに返された。そうですね、とりあえず改に掴まっておこうかな。



二人乗り

  


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