隼総



体育館と校舎を結ぶ廊下にて使いかけの紫色の口紅を拾った。こんな毒々しい色を付けるなんて、余程の変わり者もいるんだなーと落し物箱へ行こうとしたところ、一緒に歩いていた友人に止められた。「それ、きっとプリンスのだよ。落し物より直接渡した方がいい」との事。プリンスって誰だよ、そんな恥ずかしい綽名付けられちゃってと苦笑した所大真面目な顔をした友人が顔を近づけた。「プリンスを馬鹿にしたら許さないよ。あんた、隼総君も知らないなんて」大真面目な声色で、呆れられてしまった。どういうわけか有名人の落し物を拾ってしまったようであるが、私は隼総君なんて知らない。やっぱりこの毒々しい色の口紅は落し物入れ直行便である。「でも、わからないよ、女の子のかもしれないじゃない」



「あー。畜生!西野空の奴め……落し物にもないじゃねぇか!弁償しろ!」「ごめんねぇ、まさか落とすなんて思っていなくてぇ、ちょっとからかっただけだろぉ、口紅とかしちゃって女かよぉ」片方は深い紫色をした一年生で、もう一人はくすんだ金髪の同じ学年の子。更に隣にはすらりと背の高い、色白のピンク色の髪の毛を腰まで伸ばした男の子?(学生服が男の子なので多分)が立っていた。こちらは興味なさ気で落し物箱の前でぎゃあぎゃあ騒いでいる。私が近づくとガン飛ばしてきて死ぬほど背筋が冷えた。良く見るとおかっぱの男の子は紫色の口紅をつけていた。「なんだよ」今気が立っているんだと雰囲気で訴えかけてくる中サングラスをかけた男の子が止めた。「やめろってぇ……相手女の子じゃん〜」「プリンス、過激……」



ピンク色の髪の男の子がぼそりとプリンスと呟いた。今日プリンスと言う単語を言ってきたのは二人目で、私は三人を交互にまじまじと見てしまった。確率的にプリンスと呼ばれた少年は紫色の少年である。(前情報も含めて彼しかいないという確信があった)「もしかして、これ落としました?」私が手にずっと握りしめていた口紅を彼に差し出すと彼がキョトンとした顔を一瞬だけしてまたガンを飛ばした。心なしかさっきより怒気が含んでいる。「へ?あ、何でそれ持っている!若しかして西野空の共犯者か?!」どうやら、何かの共犯者だと思われているようで慌てて否定した。共犯だなんてとんでもない。ただ拾っただけだと弁明する。「体育館の近くで拾ったんです」そういうとまた、サングラスをかけた少年を睥睨した。「てんめ!そんなところまでこれ持って逃げていたのか!?」「ごめんってばぁ、無くすなんて思っていなかったんだよぉ。でも見つかったから結果オーライでしょぉ」「……馬鹿野空、今回はお前が隼総の口紅持ってからかったのがいけない。今度からは持ち出さずにからかいな」フォローに成っているんだか成っていないんだかわからないことを言いながら宥める長身の子にようやく隼総と言われた子が落ち着いた。「しょうがねぇなぁ……まあ、見つかったからいいや。あ、疑って悪かったよ……サンキュ。こいつが持ち出した挙句の果てに無くされてイラついていたんだ」



軽くくしゃくしゃと自分の髪の毛をきざったらしく、かきあげた。その仕草も、プリンスと言われるだけあって随分絵に成っていて思わず見とれていたらまだ、続きがあるようで言いにくそうに口の形が言葉を作るように形作った。「お礼と言っちゃなんだけど、今度近々学食でも奢らせてくれよ、あんたみたいに律儀に届けようとするやつ嫌いじゃないぜ」


  


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -