しつれん



とても意外に思った。メイアが力を手放すだなんて考えられなかった。我々は、人に流されやすい生き物だとはいえ、気性の荒い者がおしこめられたザンの人々も力をあっさりと手放すし、不思議なこともあるものだなと思った。私も勿論、力を手放した。長く生きられない事や、この力も疎ましく思っていた時期があったというのもあったからだ。だけど、メイアは違った。力を疎ましく思うどころか何もかもを破壊するように、うまくそれを乗りこなし、使っていた。恐らく、自分よりも力のコントロールする能力はあったし出来ていた。「あーあー、これで、私たちも普通の人間か」案外あっさりとしていた。ワクチンを打つだけで、私たちは力を抑制され普通の人間に成ったのである。



「これから、沢山大変なことがあるかもね。私たち結構ひどいこともしてきたし」「かもね。ま、まあ、仕方ないわ。これで、私たちも大人に成れるんだもの……」何処か清々しいといったように、大きく伸びをした。「ただの組織として繋がっていた人たちも友達に成ったんだし、一件落着よ」「……そうなのかもね、これで、良かったのかもしれない」結局何がいいかわからずじまいで、それでも清々しい気持ちにさせられて、あの子たちは不思議な子たちだった。同じくらいの年の男の子たちが自分たちと競り合って、それで打ち勝ったのだから。



「学校にも行けるね」「うん」私たちは今までセカンドステージチルドレンとして生きてきたから、学校も何も行っていなかった。否、行けなかったともいうのだが。それで辛い思いも沢山してきた。メイアは自力で色々頑張って勉強したから頭がいいけれど私は悲観して、色々な物を投げてきて逃げてきたから頭が悪い(いわゆるパワータイプだったわけだが、今やそれも失われてしまったから何も持っていないただの馬鹿な女の子なのだ)。「嬉しいなぁ、友達出来るかな?」「多分、出来るわよ」少なかった交友範囲も広まって普通の女の子が出来るんだろうな。



「でも、私の一番はメイアだよ」これから、沢山の人と出会い大人に成ってしまうだろうけれど、私の一番は今までもこれからもメイアだ。メイアは違うだろうけれど、同じだといいなと何度も思ってきた。メイアは嫣然と笑って言った。「私だってそうよ」ってね。意味が違うんだけどなぁ、と思っていたんだけど。まさか私は同性愛者で、君の隣に平然と立てるギリスが憎いだなんて言えなくて。私も微笑み返しするしかなかったの。「有難う」ってね。ずるいや。

  


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