喜峰に看病される



はぁ、はぁと荒く乱れた息を吐く。上下に動く胸とたまに、ゲホゲホとせき込む私を見て岬が不安げに額に手を付けた。ひんやりと冷たく熱を持っていないように思えるその掌が気持ちよくて思わず目を瞑った。バクバクと心臓の鼓動が早い、熱は引かないで上がる一方だ。まるで、そう。恋をしているみたいだ、と無意識に感じた。「はぁ……はぁ……動悸が、やばい……これが恋なのかな……」でもこれは擬似的な物だろう。本当は冗談を言えるほど元気があるわけでもないのに、思ったから口にした。目の前の岬ちゃんは怪訝そうな顔を浮かべていて「それはただの風邪だろ」ってごく普通の当たり障りのない、返事を返してきたのだ。



「岬ちゃんに……コホコホッ、優しされて惚れそうだよ」弱っていて死にそうなときにこう、優しく看病されたりすると惚れそうになってしまう。人間って、いや……私って本当に都合がよくて単純な人間だと思う。おだてには乗りやすいし。扱いやすいとは言われるけれど……それは褒められていないって流石の私でもわかることだった。ぼやけた輪郭の岬ちゃんが柳眉を下げた。「それが狙いだしな」私のくだらない冗談に付き合ってくれたのだろうかと思い、笑顔を作った。息をするのがつらい。「何、冗談だとでも思っているのか?」「うん、」うわ言のような力の無い肯定だった。先ほどから会話をするのもふわふわ浮遊しているみたいで、現実味の沸かないものばかりだった。岬ちゃんがやっぱりと言わんばかりに双眸を細めてしばたたかせた。



「まあ、そうだな。冗談だ、俺は正攻法からだ。こんなのお前への点数稼ぎにしか過ぎやしない」にぃと弧を口元に描いて言った。それが本当ならば岬ちゃんは本当に恐ろしい男の子だ、私を殺しにかかっているとしか思えない。きっと、そうだ。岬ちゃんが、熱を測れと体温計を差し出してきたので、私は大人しくそれに従った。それにしても、冗談なのか本気なのか見抜けないな、

  


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