香芽



相変わらずの香芽君、病気率。厨2の病かもしれない



錯覚をする。俺はここにはいない。あーあー、俺はここにいます、此処にいます。見えるか?誰か俺を見つけてくれ。保護色を纏えば世界から隔絶される。ただ、波風も立たないけれど、危険もない。孤独感と虚しさだけは残るけれど生き残るためだと、思うと慣れるしかないんだなって諦めた。名前が無邪気に笑う。名前はこうして普通に生きられる人間だ。俺みたく、保護色なんか使わなくても、生きていける人間。俺も同じ人間なのにどうして、こうも違うんだろうと頭をもたげたこともあった。今はそう考えるのを辞めた。何故なら、俺は弱い人間だからだ。諦めた。諦めるのはこの世界においてもっとも楽な道だ。受け入れるのと諦めるのとは、違う。似ていて非ずなるものである。



「私にはレオンが見えているよ」
ペタリ、触れた手のひらは子供体温で俺よりも幾分か暖かかった。太陽の日差しと言えば分るだろうか。そんな感じ。俺にとって名前は太陽で、なくてはならない存在だ。失われたものを補ってくれる。
「……どういう意味?俺は此処にいるよ。いつだって存在している」
此処です、此処にいます。ただ、錯覚を起こしてはいる。俺は虚しくて仕方がない。俺は此処にいるけれど、此処には存在しない。反復する。反復する。
「レオンは此処にいるね」
「いるよ。俺はいる」
寂しい、虚しい、苦しい。負の感情とマイナスのすべてを詰め込んで。俺は息を吐いた。空気中に散布する。拡散する。
「辛い……?」



名前はいつも俺の考えを見透かす。そこが大好きで、大嫌いだ。俺のことを何でもわかっているというような口調も何もかもが。唯一の理解者のくせに、俺と同じ場所になんかいない。理解はしているのに、同じ苦しみを味わわない。(それは本当の理解と言えるのか?理解していると言えるのか?何故ならこの苦しみは俺しかわからない)
「辛い」
言葉を殺せばいい、聞こえないふりをすればいい。俺はいない。此処にいるのに。
「大丈夫。私にはレオンが見える」
受け入れる風に両手を広げて、そのあとに太陽にかざした。影を作る。ああ、もういいいや。名前にだけ見えれば。名前が見つけてくれれば。それで。誰にも見えなくていい、誰も見つけてくれなくていい。それでいい。



処に居ても見つけてあげる


  


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