星降



付き合っていた彼氏とうまくいかずに別れて、一か月も経たないくらいに香宮夜という男に「この間あいつと、別れたんでしょ?じゃあ、俺と付き合ってよ」って真剣さの欠片も無いような告白を受けた。まだ、前の彼氏のことを引きずっていた上に彼の女癖の悪さを知っていて私は「え、」と口籠ってしまったわけで。何せ、彼の断片的な情報と言えば人づてに聞いた噂話だけでしかもマイナスな噂ばかりだった。“いつも傍に誰か綺麗な女の人がいる”とか“かなり遊んでいる”だとか。そんな噂を耳にすれば顔がいくら整っていても遠慮したいものがある。



口籠り一言も言葉を発せない私に、随分と整った顔を近づけて口の端を持ち上げて笑う。
「信じてくれないと思うけど、あいつと別れるのをずっと待っていた」
どんな台詞も彼が言うと随分と様になるものだ。普通のそこら辺の男が言ったらある意味で、ドン引きしそうなものなのに。彼は自分の容姿の使い方を知っている。だから、こんなこともきっと、億劫も無く言える。
「俺が好きになった時には既に付き合っていたから、言えなかったけど。ごめんね、別れたって聞いたとき俺、内心で喜んじゃって」



驚愕してしまうような、言葉が薄い唇から洩れるのを聞いて卒倒してしまいそうになった。人の不幸を笑っているようなものじゃないか、と背の高い彼を下から恨めし気に睨む。
「香宮夜君、性格悪いよ」
「そうかもね。自分でもビックリしたくらい。最初は奪うつもりだったんだけど、手間が省けた」
しれっと反省する様子もなく、追い打ちをかけてくる。ああ、本当性格悪い。
「その癖、色んな子に手出していたんじゃないの?」
厭味ったらしく言ってやれば、目をまん丸くした後に「知っているんだ。でももう全部、手を切ってきた。けじめ付けないとね」と信じがたいことを口にする。



それを信じていいのかわからずに困り顔を浮かべていれば、はぁ……と溜息を小さくついて先ほどよりも真剣な表情を作った。
「もう一度言う、俺と付き合ってよ」

  


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