不特定



!安心の首絞め率。


名前の美しい瞳が好きだ。名前の輪郭が好きだ。名前の優しい言葉を紡ぐ唇が好きだ。言い出すときりがないのだが、要するに彼女の所有するすべての物が好きだ。全部好きだけど、特に好きなのは瞳だ。パッチリ二重の瞼から覗く、漆黒の濡れた瞳。それは、よく俺を映すのだがたまに別の人を映す。
「名前」
甘ったるい声で、名前を呼びつければ何も知らない名前がはにかむ。俺がどういう気分か知っているかい。



細い首筋に両手を伸ばして、きゅっと絞めた。驚いて反射的に体を離そうとする名前の首に力を込めた。怯えている名前は苦鳴を漏らして、震えている。白くて細い首は、俺の力でへし折れるんじゃないかなって錯覚する。
「ぐっ、……ぁっ」
苦しそうに涙が瞳に膜を張っていた。それも、堪えきれずにこぼれた。今は俺だけを見ている。俺だけを。虚ろに揺れる双眸は焦点が定まらない。強く絞める手のひらを退けようと手首をつかんだ。弱弱しくて、退けるだけの力はないが。
「名前には、俺が見える?」



弱弱しく力なく何度も頷く。今だけは俺しか見えていないのかな、って名前の瞳を見つめれば、俺一人だけがしっかり映りこんでいて喜んだ。だけど、すぐに俺の背中にある空の沢山の星が、宝石箱をぶちまけた様にキラキラ輝いていたのに気が付いた。それはとても幻想的で、美しいものだった。なるほど、俺だけで支配することは到底出来ないようだ。
「今日は星が綺麗だね、名前」
名前はぐったりと俯いた。今日の空の綺麗なこともわからないまま。


な歪


  


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テーマ「人外ファンタジー」
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