西園



名前はいつも、僕を抱きしめる。暖かな名前に包まれるの、僕は嫌いじゃないよ。でもね、僕は少しだけ不満なんだ。お人形さんとか、ぬいぐるみみたいな感じで。そんなの僕やだもん。そんなの、詰まんないよ。僕だって、名前のことぎゅーってしてあげたいし、名前のこと守れるような格好いい男になりたいし。背だって、名前より高くなりたいし……。(正直最近は、天馬が少し羨ましい)だって、普通に名前のこともぎゅーってできるんでしょ?羨ましいよ、僕。もっと、こうどーんと背が伸びたらいいなーって思うんだけど……。このことを話すと名前は苦笑して信助はそのままでも十分魅力的だよ。といって僕の頭をくしゃくしゃと撫ぜた。僕は納得がいかない。



「うーん、牛乳飲んでも全然おっきくならないよー。どうしてだろうー」
よくお話で聞く、牛乳を飲んでみたけれどちっとも伸びない。たまに保健室で身長を計っては溜息を吐く。名前が僕を抱え上げて頬を寄せる。
「うー、やめてよー!降ろしてよー!」
じたばたすると、名前が抱えきれなくて僕は降りることに成功した。
「……牛乳だけ飲んでも駄目だよ。ちゃんとバランスよく色々食べないとね」
「そっか!有難う!僕、頑張るね!」
名前から、最もな意見を貰って僕がお礼を言うと「いえいえ」と顔を綻ばせたがすぐに複雑そうに、笑みを絶やした。



「私は今のままでいいんだけどなぁー」
「僕はこのままじゃやだ!僕だって、名前のことぎゅーってしたいもん!」
「……でもなぁ、信助の大きくなった姿を想像できないんだよね……」
ちょっと、失礼なこと言われた気がする。僕がムッとして、不貞腐れていたら名前が僕を抱き寄せた。その手には乗らないぞ!っていつも、思っているんだけど、いつも負けちゃうんだよね。
「身長だけが全てじゃないでしょ?」
「う、確かにそうだけど……。名前に僕の気持ちなんてわかんないよ」
確かに名前の言うとおり、身長だけが全てではないとは思っている。だけど……。僕が名前の腕の中で項垂れた。
「ごめんね」
苦笑いして、僕から体を離した。自由にはなったけど、少しだけ寂しくなった。



名前が体を離して、隙だらけになったところを狙ってギュッと抱き着いた。
「あのね、名前!僕もこうして名前を抱きしめたいんだ!」
僕が思い切って、そう言うと名前が驚いたように、数度瞬きをして微笑んだ。いつか、僕が大きくなっても、名前とこうしていたいな!



外、小さいのも悪くないんじゃないだろうか?


  


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