マント



大きなマントのようなボリュームのある髪の毛をなびかせるクールな、彼女に心ひかれたのは彼女を初めて見たときからだった。胸の高鳴りを抑えきれずに、フェイ君に何度も頼み込んだ。私とフェイ君の仲は、ただの仲間だったけれど、どうでもよかった。私はフェイ君自身に心惹かれることはただの、一度も無かったのだ。その雰囲気を察してか、デュプリのマントちゃんを出してくれる時のフェイ君の仕草はどうもぎこちなかった。それどころか、最近はデュプリ……特にマントちゃんを出そうとしてくれない。なんでマントちゃんをあまり出さなくなったのかと、問うたところ。「名前に関係ないだろう。……それに、気のせいだよ」って、何処か作ったような笑顔で言ってのけた。絶対に嘘。



今日は土下座をする勢いでフェイ君に頼んでみた。なんでもする、私はマントちゃんが大好きなんだ。例え、人間でなくてアンドロイドでもデュプリでも(女の子でも)マントちゃんが大好きで大好きで焦がれて、しょうがないのだ。ああ、愛しているのだ、彼女を。フェイ君は困ったような顔をしながら、頬を人差し指で掻いた。「少しだけだよ、」わかっているよ、デュプリを出すのは消耗も激しいし。だけど、私は一日に一分でも一秒でもいいから逢いたくてたまらなかったのだ。恋する乙女も卒倒するような、一途さをいつまでも携えていた。「……マントちゃん、逢いたかったよ」フェイ君が複雑そうな様子でこちらを見ていたので、私はマントちゃんの腕を引いて、人気のない場所に移った。流石に、フェイ君にだってこんな所、見られたくない。



マントちゃんはいつものように唇を柔く結んだまま、何処か無機質な表情を動かした。「……なんでこんなことをするの?私は人間じゃない」私には理解できないと暗に言っていた。だけど、構わなかった。彼女の理解を得られなくても、私自身が愛していることには変わりがなくて、それは揺らがないのだ。「……愛しているから」愛しているから、話したい、見たい、触れたい。「……、本当?私も嬉しい」「え」てっきり、私と逢う時はいつも無表情か仏頂面だったから、私は嫌われているのかと思った。嬉しくて小躍りしたかったけれどその後に続く言葉に固まった。地面に足と影を縫い付けられたようだった。「私はフェイの気持ちも、共有しているから。だから、私も貴女が好きだと感じる。詰まり、私の意志それは、フェイの強い気持ち」「……」そんなの、聞いても仕方ないよ、マントちゃん。私が好きなのは、好きなのは……凛として、美しく気高い貴女だ。それなのに、



「だから、名前にはフェイを好きに成ってほしい」「それは無理だよ、私はマントちゃんが」その時に、マントちゃんが私の両頬を抑え込んで私の唇に深く口づけた。「私ではなく、フェイを選んでくれ。それがお互い幸せに成れる方法、私も貴女を愛している。でも、これはフェイの強い気持ちだ」じゃあ、なんでキスをするの。こんなの残酷だよ。


ニュートラルは恋をできない


  


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