唐須



俺の女はいつも耳にピアスをつけている。流石に舌とかにはしていないようだけれど、キラキラ光るそれに俺は目を奪われる。隠微に笑う名前にキラリ、また光を受けてそれが反射した。俺が目を細めて、名前の肩を掴む。名前はキョトンとした表情で俺を見上げていた。名前が俺のフードを下ろす。首筋に俺が顔を埋めて、その後に耳たぶをペロリと舐めた。正確には、名前のピアスを。



「うっわ!何すんの!」
「うるせえ!黙れ」
色気のない声で叫ぶんじゃねぇ。少し歯を立てるとガリッと嫌な音がした。人工物のなんともいえない味がする。光物ってやっぱり心惹かれる、物心ついたときから好きだった。それは、俺の本能なのか。暫く耳たぶと、ピアスを交互に舐めたり噛んだりして遊ぶ。「あっ……、はぁ……」と、押し殺したような声が聞こえる。くすぐったいらしい。ようやく飽きてきたころに口を離した。


「本当、何なの?いきなりさ。壊れたらどうするの!これ、買ったばかりなのに!」
先程まで舐めていた、ピアスに手をやって恨めしげに俺を見ていた。
「買えばいいだろうが、新しいの」
「……唐須って本当、光物が大好きだよね」
「なんだよ」
「だって、唐須いつも私の耳を見ているんだもの。正確には、こっちの光っているものかな?まさか齧られると思っていなかったけど」
そういって名前はピアスに触れていた手を離して俺の無理に染めた、ピンク色の髪の毛を耳にかけた。そして、今度は俺の耳を齧った。なんだ、ばれていたんじゃねーか。名前はお見通しだったんだ、俺が何を見ていたか、なんて。




覚のない習性

  


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