亜風炉



彼は女の子だといわれてもわからないほどの美貌を持っていた。嫉妬はしないけれど、ああ、悲しいかな劣等感というものはいつだって、私の周りについてまわっていた。苦しいほどの、動悸。それから、たまに眩暈。神様に愛されるという自信なんて微塵にもないから、余計に彼の行動は理解に苦しんだ。ただ、動物や植物を愛で、慈しむそれなのか、本当に彼女としてみてくれているのか。積もり積もっていく不安は照美には言えなかった。優しい黄金色の、髪の毛をさらさら流して私に触れる。


「どうしたんだい。そんな顔をして」
細くしなやかな指先が顔に触れた後に、心配そうに赤い瞳を伏せた。本気で心配しているようなそんな顔だった。私は何でだろうか、感情が溢れかえってしまって彼に言ってしまった。今まで思っていたことの全てを。
「照美の横にいる自信がない。どうして、私なんか……、」
そこまで言って顔を上げて照美を見ると照美は怒っていて、それ以上言葉を紡ぐことを許されなかった。声には怒気が含まれていて、私は初めて照美に、恐怖を覚えた。両頬を真っ白な手で固定された。



「君にはわからないんだね、僕がどれだけ、君を愛しているかなんて。僕は優しくなんかないからね。軽い気持ちで、誰かと付き合うなんてありえない」
もうね、その言葉には私は心臓が口から出るんじゃないかってくらい驚いた。照美の口からそんな言葉が出てくるなんて思ってもいなかったから。しかし、照美が冗談でこんなことを言うような人だとは思っていない。フッ、と唇にゆるやかな曲線を描いて私の唇に唇を重ねた。


「大好きだよ。一緒にいるなんて、決まっているじゃないか、君が好きだからだよ」


  


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