メフィスト



ふぁーすとの星降君の差し替え品

「なんか、メフィストのつく嘘、へぼくない?」訝しげに俺を見る名前の目は、何か他にも言いたげだったがそれ以上は言ってこなかった。まあ、大よそ言いたいことの予想はつくんだが、とりあえず俺の嘘がへぼいというところは訂正しておきたい。俺のつく嘘はへぼくなんかない。壮大ででかくて、誰もが喜ぶような大きな嘘の方が多い。そしてぬか喜びする馬鹿な人間を見るのが俺の趣味だからな。俺の餌食になった人間の数は数知れず。「へぼいとはなんだよ!」「……だって、私のお菓子をデスタが食べていたぞ。とか、そんな程度の嘘なんだもの」……そういえば、名前に対して昨日そんな嘘ついたような、ついていないような。俺は嘘を吐く回数が多いから、一々嘘の内容なんて記憶していないし回数すらも把握していない……そもそも日常生活の一部で俺の一部なのだが、言われてみれば僅かに記憶の片隅に残っていて、……そういえば昨日そんなくだらない嘘、ついた気がする。名前は美味しい俺の餌だ。俺の嘘に簡単に引っ掛かってくれるので面白い。とても、学習能力が低いようだ。



昨日の記憶を掘り返してみてもそうだ。口からサラリと出てきた嘘にまんまと騙された名前が「私の今日のおやつ返せ!」ってデスタに殴りかかっていたのが中々、見ものだった。デスタが「はあああ?!俺が何したっていうんだよ!人間の分際で!てめぇはくわれてぇのか?!」とか本気でブチ切れていたのも馬鹿だと思った。こいつも大抵頭が悪い。まともに話が通じる奴少なすぎて魔界、本当笑えるんだけどさ。デスタはこの通り馬鹿だからさ。因みに、名前の三時のおやつを食べたのは俺だったりする……たい焼きだっけ?なんかこの辺で見かけない珍しいお菓子で、美味でぺろりと二匹の魚をかたどったお菓子は俺の意の中に納まった。騙される方が悪いという人間がいるけど、俺はそいつとは友達になれる気がする。というか、そいつの言い分が正しすぎて困る。世の中騙すか、騙されるか、だ。この二つしかない。そして俺は馬鹿と同じ騙される側で居るよりは、騙す側に回りたいと思っている。くだらない事で損するのなんてごめんだ。



「じゃあ、どんな嘘がお望みなんだ?お嬢さん」小ばかにしたように、笑って名前の顔に両手で触れて見せて顔を上に向かせるとふくれた。「嘘ついてほしいわけじゃないの!ただ、私につく嘘がへぼすぎるって思ったの!」やっぱり心外だ。俺は名前以外には結構、残酷な嘘をついている。名前は知らないだけだ。俺は加減をしているだけだ。詰まらないことで名前が本気で悲しんでいる姿なんて見たくないから、加減をしているだけに過ぎない。それなのに、名前の奴、俺の嘘をへぼいとか言いやがって。「……はぁ、俺が惚れた女にそんな酷い仕打ちするような男に見えるのか?」「いきなり何……?」名前は知らない心におしこめていた事実。名前を見れば、混乱しているようだった。確かに、いきなりだったから仕方ないか。「……名前が、好きだからあまりにもひでぇ嘘は名前につけないんだよ。ばーか」「え、ええええ?!」行き成りの答えに大袈裟なくらいに驚き、戸惑っていた名前の煩い口を塞いでやった。目も当てられないような残酷な嘘よりも、くっきり残った口紅の痕は俺の物という証なのだ。

リズム

  


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