源田



重たく、冷たい無機質な玄関の扉に手をかけた。そして、振り向きざまに源田を目に入れお礼を述べた。
「源田、わざわざ有難うね。送ってくれて」
源田は私を見て、スッと目を細めた。優しげな表情をする源田が大好きだった。前にそれを言ったら源田は照れたように、今浮かべた表情を作ってくれた。
「ああ。最近、物騒だからな」



物騒……そう。今日も学校の先生が言っていた。最近はやれ、変態だの露出狂だのが出るらしい。冬になれば流石に露出狂も減るのだろうけれど……。あいつらの性癖は理解に苦しむ。理解したらそれは奴らの仲間入りということなので、理解できないほうがいいのだけど。源田は少しだけ、過保護で心配性だけど……私のことを心配してくれて、だと思うと嬉しさのほうが勝ってしまう。源田は優しいけれど、きつい部活もやっているし…無理はしてほしくなかった。今日だって、サッカー部が練習していたのを知っている。強豪ならば、尚更だ。すでに太陽が身を隠し、カラスの鳴き声が耳に入る。私の家は源田と近いとは言え、少しだけ距離がある。ご近所といえばご近所だが。



「源田も気をつけてね。浚われないように。ショタコンとか色々あるから……源田も需要あるから……」
「……嫌な需要だな……。俺は大丈夫だろ多分。家の中に入れ。風邪引くぞ」
俺は一応鍛えているし、何より……お前よりは力ある。と源田が少し顔をしかめ、私に家の中に入るように促した。まるで、娘を心配する母親の台詞だ。今の台詞を柔らかくすれば母親が言ったといっても違和感は無い。源田に苦笑しながら「はいはい」と返事して家の中に入った。扉はまだ、大きく開かれたままだ。私は大きく源田に向けて手を振った。



「じゃ、源田……また、明日ね!」




  


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -