芙愛



朝の空気は冷たくて清らかだ。だが、朝は苦手だった。早起きするということ自体がまず苦手だし。私はそもそも寝ることが一番大好きだし……三大欲求の中で何が一番強いか、と問われればまず一番にあげるのは“睡眠”だ。早起きは三文の徳というが、私は得をしなくていいから寝ていたい。大きなあくびを一度だけして、机に頬をつけた。ひんやり冷たい机に自分の体温を奪われていくのを直に感じられた。段々と談笑しているクラスメイトの笑い声や、話し声……意識が遠のいていく。



「おはよう」
それも束の間だった。クラスメイトの誰かの声によってそれは失われた。意識が呼び戻される。ゆっくりと緩慢な動作で、声の主を確かめるべく顔をあげた。左右の瞳の色が特徴的な、瑠宇君が私の机に手をつきながら見つめていた。友達は大事なものだと理解していても眠さで少しイラついている。



「おはよ……」
明らかに朝の低いテンションをむき出しにしながら、挨拶を返した。朝は苦手なんだ。と彼にも前一度話したことはあったためか、その様子に気を悪くした様子はなかった。眠たくて、いらいらしてしまう悪い癖を直せるのならば、直したいものだ。また、私の体が空気を欲しているのか大きく欠伸をした。口元を手で覆って目じりに溜まった、涙を拭った。



「朝……本当に苦手なんだね。僕も、あんまり得意じゃないけど」
私の先程のあくびを見て、伝染したのか瑠宇君も一度欠伸をする。
「そうだ……僕の膝でも使う?」
机よりはいいよ。とぽんぽんと、数度私に促すように膝を叩いた。何を言いたいのかこの寝ぼけたボケボケの頭には理解をするのに少しだけ時間を要してしまう。
「遠慮しておく。寝ている隙に何するのかわかったもんじゃないし」
「やだなぁー……。少しファイルするだk……」



彼は綺麗なものが大好きらしい。そして、瑠宇君の美的感覚はずれているらしい。可哀想に、と憐憫すると彼は怒るが。
「ダメ、ぜったい」
瑠宇君の台詞をさえぎって、私はまた机に伏せた。ああ、眠い……。


おはよう!

  


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