喜多海



春夏秋冬どれも、魅力的な季節ではあるけれど……私は夏が一番大嫌いだ。何故……?春は何の問題もないし……秋は少し肌寒くなるけれど、果物が美味しい季節だから許せる。冬は寒くて凍え死しにそうだから、少しだけ苦手だけど夏よりはマシだ。なぜなら、夏は夏ばてするし……クーラーの風でお腹は壊すし……扇風機だと生ぬるすぎて死ねる。大体、最近は異常気象だかなんだか知らないけれど暑すぎるのだ。もう少し暑くなければ夏も愛せるのだけれど……(プールに海に、山……最高じゃないか。暑くなければ、だけど。)首を振り続けて必死に働いている扇風機は本当にご苦労なことだ。



喜多海も暑そうに、マフラーを扇風機の風に靡かせている。暑いなら取れば良いのに、と先程も言ったのだが、頑なにとろうとしない。確かにマフラーは喜多海のトレードマークのようなものではあるけれど夏くらいは取るべきだ。首が蒸れてしまうよ。だけど、本人が取りたくないというのならばその意見を尊重してやるべきだ。何もする気が起きずに瞼を閉じて、風を堪能していたらふいに風が来なくなった。目を開けて確認すると、喜多海がいつの間にか扇風機の前を陣取っていて、首を振っていた扇風機を無常にもその手で固定して、風を占領していた。私のところには勿論、風なんか少しもやってこない。おこぼれの風すら来ない。喜多海の奴め……マフラーが暑いならとれとあれほどいったじゃないか。



「私の風を返して……喜多海。あと、マフラーとって」
ジトリと睨みつけると、喜多海は涼しい顔で(実際に風に当たっているから私よりは涼しいだろう。)
「いいべさ」
するするマフラーを取って、地面に無造作に投げ捨てた。貴重なシーンを見た気がした。喜多海は暑かろうと、なんだろうとマフラー巻いているから。扇風機の首を固定するのをやめ、手を離したと思ったら今度は私の横に手を突いた。
「でも……僕は、マフラー取るときはキスをするとき、って決めているべさ」

マフラー


  


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