半田



お隣の半田が終わっているというのに……あー、ダメだ。本当にダメだ……。全然終わらない英単語の数々を、瞳に焼き付けながら小さく欠伸をした。手のひらで、口元を覆った。平均的な半田に負けたということは、私は平均以下ということなのだろう。悔しいけれど……仕方ない。半田を見て悔しさみたいなもやもやしたものが腹の底からわきあがってきた。しかし、半田も応用問題で詰んでいる。応用問題は難しいから仕方ないとはいえ……諦めているような雰囲気を感じる。



出席番号順的に……そろそろ私が当てられそうだということは予測済みだ。英語の教師は席順ではなくて、出席番号順でいつも当ててくるのだ。ランダムじゃないだけまだ心の準備が出来るが、次私だとわかっているから内心ひやひやしている。半田が「駄目だぁ。わからねぇ……。終わったか……?」と、私のノートを覗いてきた。そして、顔を顰めて声を潜めて私に話しかけてきた。
「……うわ、まだ問三って大丈夫か……?次、お前だろ……?当てられるの」
不安げに私の瞳を覗き込みながら、自分のノートを見せてきた。乱雑に書き綴られた文字を目を丸くして見ていたら、半田が言葉を続ける。まだ、声を潜めながら。
「俺のでよかったら写して良いけど……?」
「あ、有難う、半田っ……」



素直にお礼を言うと半田がニッと、白い歯を見せて笑った。「合っているかは、わからないけどな」ふざけた様に、目を三日月のように細めた。シャーペンをすばやく滑らせて、いつもより汚い文字を綴った。殴り書きのようにすら見える。ジッと私が書くのを優しげな瞳で見つめながら、私が書き終わったのを確認して自分のノートを私が見やすい位置から、元あった位置まで戻した。半田は優しい、いい奴なんだな。知らなかった。今度ちゃんとお礼をしなくちゃ。




  


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