松野



あああ……。なんて量なんだ。可笑しいだろう、この量……積み重なった紙の山が減らないのはきっと私のやる気の無さと、頭の悪さのせいだろう。ギブアップしたいのは山々だけれど……長い休みの期間にこれを終わらせなければ、面倒な罰が待ち受けているのだ。それだけはなんとしても避けたいと思っていた。あの先生は結構マジだから……本気でやらせるだろうし。しょぼしょぼする目を、白黒印刷の宿題に滑らせる。まともな答えは書いていない。やる気も出ない。ご褒美のひとつでもあれば、まだ頑張れるかもしれない。



テーブルの向かいに座っている空介が頬杖をついて、私を見下ろしていた。猫耳の癖に、私より進みがかなり速い。というか、休みの前半で殆ど終わらせたよ。とか底意地の悪い笑みを浮かべて言っていた。私とは正反対なのだ。私は休みギリギリまで終わらせられない。というか、やらない。苦しいことは後回し……。悪い癖でもある。去年それを学習したはずなのに、誘惑には勝てなかった。学習能力が無いわけではなくて…やれると思ったのだ。その時は、の話だが。よくある、よくある……。もうだめだ。と机に伏せて、諦めの体制に入っていたら空介に頭を小突かれた。



「ほら、そこ休まない。ちゃんとやらないからこうなるの、わかっていたよね?僕が折角、一緒にいてあげているのに」
「はぁはぁ……ご尤もでございます……」
嫌味にも下手に出る。私が悪いから逆切れをするわけにもいかないし……。畜生、先生の鬼、悪魔、鬼畜!先生が私の苦手な科目ばっかり増やした気がする……。ただの痛々しい被害妄想だとは自覚しているけれど……もう考えたくない。やりたくない。



仕方なしにシャーペンを手にとって、数度ノックして芯を出す。見てもわからないし、シャーペンを手に取ったところで、事態は好転しないのだが……。空介は暇そうに、腕を後ろに組んで落ち着き無い。恐らくは飽きたのだろう。
「……はぁ。僕、もう厭きたなー。少し休憩にする?」
……ほらね。私はシャーペンを、プリントの上に置いた。今日はもういいだろう。見上げてくる猫耳帽子の少年の甘言に乗っかる私も私だけどね。



甘言


  


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -