星降



「寒い寒い寒い寒い寒い!」俺の彼女はとっても寒がりです。今日も寒い寒いと連呼しながらがちがちと歯を震わせて鳴り止まない。彼女は別に薄着だというわけではない。寧ろ着込んでいる方で、何枚も何枚も重ねており彼女の服が分厚くなっている。元々、華奢な体つきなのに服を着込み過ぎて少しぽっちゃりしているように見えてしまう。なんだか、妙な光景なのだが俺が思い切って言ってみた。それはさながらコンビニ店員の様だった。「温めますか?」



彼女が意外と言わんばかりに目をパチクリさせて俺を見た。足のつま先から、髪の毛までそれから、俺の言いたいことが分かったと言わんばかりにニコニコ笑っていった。「早急にお願いします、心も寒いんです」「畏まりました、心も温めましょう」そう言って俺の腕の中に飛び込むとスポッと納まった。丁度、収納された彼女は俺の服に顔を押し付けて寒さをしのぐように温もりを求めてくる。俺は温かいのだろうか、随分と幸せそうな顔をしているので思わず笑ってしまった。クツクツ喉元で笑っていたら接近していたせいかすぐに気づかれた。「笑わないでよ!それよりさっきのはコンビニを思い出したよ。香宮夜の場合はホストって感じだけど」「ホストね。普段俺をどんな目で見ているかよくわかる発言だ」



言っておくけど他の人を温めたりなんかしないんだからって説明すると疑わしげな眼差しを食らったので、全力で否定した。誰にでも優しければそれこそ、ただの最低な男に成り下がってしまうじゃないか。「でも、温まったよ。身も心もね」ああ、寒かった。寒かったと繰り言のように呟いて。俺も温まってきたけど、俺はただで温めてあげるなんて一言も言っていない。言わば見返りを求める愛のある行為だったのだ。身を引きはがさずに耳を噛んで舐めた。「ところで、温めた料金がかかるのですが、いかがしましょう」「は?料金?」案の定何も知らない彼女を困惑させてしまった、今日は良く笑う日だ。だけど、先ほどのとは意味合いがだいぶ異なっている。言わば今の笑いはこれから起きるであろう未来を想定し、見越しての楽しみの含みのある笑い。



「そんなの聞いていないよー」「別にそういう意味じゃないから、安心して」まあ、それをご所望ならば、その冷えた体を俺の体で温めるなんて選択肢も無くも無いけど。きっと、ご所望ではないはずなので、俺は彼女の頬に口づけた。「お前からのキスが欲しい。俺の心は冷え冷えとしているよ、いつも俺からばかりだから。俺って寂しがり屋でしょ。それに奥手だし、本当は」「それは嘘だよ!こんなに慣れた奥手知らないよ私」あーもうわかったから。ほら、早く早く。俺の心も温めておくれ。俺の可愛いお姫様。わざとらしく急かしてみれば世界一可愛い俺の彼女からの慣れない、不器用なキスを頂けた。ほら、俺の心も温かくなってきた。君からのキスは誰よりもとっておき。


  


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