円堂



世界は白と黒、そして灰色で出来ていた。昔は、様々な色。それこそ、無限の色で出来ていたのに。いつの間にか白黒写真のように褪せていってしまって、白と黒灰色だけの世界になってしまったのだ。なぜ?どうして?どんなに考えてもわからなかった。そして、このモノクロの世界は私にも、友達にも親にも直せなかった。つまり私は、行き詰ってしまったのだ。(所謂、お手上げ状態……だ)



「おはよう!」
友達が、私に朝の挨拶をした。相変わらず、単調で何も変わらない日々だ。短く返事を返すと、いつものように気になる男子の話や、ムカつく先生の話なんかをしだした。並んで学校へと歩いているときに後ろから、男子の元気な声が聞こえてきた。
「おはようっ!」
円堂君だった。同じクラスではあるけれど、あまり話したことは無かったし何より、彼の周りには誰かしら居て近寄ることを憚られた。(彼は、眩しい。色々な人を惹きつける魅力があるのだ)



急に挨拶をされたことに驚いてすぐに、返事を返すことが出来なかった。だが、それよりも驚くべきことがあった。世界に色が戻ったのだ。色鮮やかな、草木。そして、彼の色。
私は思わず円堂君を見つめてしまった。円堂君は、魔法使いか何かなのだろうか?なぜ、私の色を取り戻すことができたのだろうか。円堂君は放心している私を心配そうに見つめていた。大きな黒い目から思わず、目を逸らす。
「……あ……おは、よう」
ようやく、搾り出した挨拶に円堂君は白い歯を見せたあとに、水色の長い髪を一つに束ねている男子の所へと駆けていってしまった。賑やかな声が前方から聞こえてくる。どうやら、二人は友達らしい。



「大丈夫……?」
友達が私のほうを見つめていた。そんなに私は呆けていたのだろうか。
「あ……うん。ちょっと驚いただけ」
小さく愛想笑いを浮かべると友人はほっとため息を吐いた。ようやく、全てのものに色が戻った。と私は浮かれていたのだが。世界は円堂君が離れると同時に、また段々と世界は白と黒にゆっくりと戻っていってしまった。そのことに私は首を小さく傾げ、前方に居る円堂君の背中を見つめた。私は知らない、この世界のことを。


  


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