吹雪



片方は怪しく不自然に取りやすくなっているカード。もう一枚は、普通のカード。吹雪君はそんな私の様子を面白そうに見つめている。こんな攻防が先ほどから続いているのだけれど、終わる様子が見えない。(風丸君とリュウジ君も居たんだけど、さっさとこのばば抜きを終わらせてしまった。運がいいらしい)
「さぁ、どっちを引く……?」
心理戦は苦手なのだ。どちらのカードを引こうとしても吹雪君は表情を崩さない。相手の守りは固いらしい。
「もう、負けちゃえばどうかな……。楽になるよ?」



吹雪君らしくない、意地の悪い笑顔を向けた。あの純粋な(最近は純粋とは思えないけど)、女の子をノックアウトさせる例のあれではない。明らかに何か企んでいます、というような嫌な笑みだ。
「……やなこった!」
「……ふふ、残念だなぁ」
吹雪君はやたら、余裕そうな表情だ。どちらのカードを取ろうとしても眉ひとつ動かさない。見事なポーカーフェイスだ。私はあまり、心理戦はあまり得意ではないのでどうにも苦戦を強いられている。普段ならば此処まで、カードゲームごときにムキになることもないのだが。(そもそも、私のモットーは、ゲームは楽しくやろう!なのだから)



負けたら僕の言うこと一つ聞いてね。とかふざけたことを言うので私も負けるわけにはいかなくなってしまったのだ。きっとロクでもないことを、言ってくるんだ。私にはわかる。普通のお願い事ならこんな悪そうな笑みを浮かべない。
「よっし、右だ!右っ!」
きっと裏の裏をかいて、この右の怪しいカードが当たりなんだ!そう思って、思いっきり引いた。その瞬間、視界の真ん中で吹雪君の口元が妖しく歪んだ。しまった!こっちがはずれか!と思ったが遅かった。希望を捨てずに、カードを見てみたが……やはり、ジョーカーだった。ジョーカーさんこんにちは……。愕然とする私に苦笑しつつ、吹雪君は涼しげな顔で私が持っていた最後の一枚をとってカードを真ん中のカードの山に捨てた。完敗だった……。私は負けたのだ。諦めて、吹雪君の願いを聞こうとしたら、吹雪君は言いづらいことなのか、耳元に顔を寄せて耳打ちした。
「僕が勝ったから、今日も僕の家に来てもらうよ?覚悟してね」
……私はただ、引き攣った笑顔を向けることしか出来なかった。



  


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -